オープン・ネイチャー展「情報として自然が開くもの」

HAPPENINGText: Yasuharu Motomiya

毎回様々なテーマに基づき、科学技術と芸術との関係を様々な視点から照射する数多くの企画を行ってきたNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)で「オープン・ネイチャー:情報として自然が開くもの」展が行われている。

今回の展示はメディア・アートによる新たな自然というもので、人間が持つ自然の概念が科学技術の進歩により、常に変化し拡張し続けるという現象をメディア・アートという視点から捉えるという試みであった。


「バイオプレゼンス 2055」福原志保+ゲオルク・トレメル(2005)

世界各国から集まった13組のアーティストやプロジェクトの出展作品は、どれも興味深いもので、無人飛行機開発プロジェクトでもあり今回の展示に併せて制作された「スペクトラル‐システム TYO ON 2005」(コンピューター制御された未来的なフォルムの無人飛行機により解析された東京の鳥瞰図などの映像を含むインスタレーション)や、バイオテクノロジーとアートというコンセプトをもつアートベンチャー、バイオプレゼンスによるエアードーム「バイオプレゼンス2055」、そして、ノウボティック・リサーチによる「ネイキッド・バンディット v2.1」等など、現在の世界にある組織化された構造や社会システムなどをメディア・アートという形で顕在化させていた。

そのなかでも取り分け印象に残ったものを紹介しよう。


「ヴァーチャル・マラソン」チャールズ・リム&メルヴィン・プア(Tsunamii)(2005)

まず、シンガポールのチャールズ・リムとメルヴィン・プアによるメディア・アート・グループ、Tsunamiiの「ヴァーチャル・マラソン」。オンライン上で複数用意されたマラソンコースを選び、キーを叩き、マラソンをしていくというもの。普段インターネットを使用しているときには全く意識しないサーバーとの距離感が、キーを叩き続けるという正直根気のいる動作の中でコンピューター上をアニメーションとして、サーバー目指し走り続けるキャラクターを通して仮想体験でき、いつしか自分がそのアニメーションキャラクターとリンクしていく。ちなみに、ゴールまでたどり着くとその記録はアーカイブされ、プロジェクト終了後に誰が早かったのか発表される。彼らは、これまでも「alpha series」などインターネットの物理的側面に言及した作品を発表している。


「The SINE WAVE ORCHESTRA stay」サイン・ウェーブ・オーケストラ(2005)

そして、サイン波による人と人とのコミュニケーションを基本コンセプトとする参加型プロジェクト、サイン・ウェーブ・オーケストラによる「The SINE WAVE ORCHESTRA stay」は、インスタレーション内中央に設置されているデバイスと、それを取り囲むように設置されたサウンドスピーカーのインスタレーション。

訪れた人が設置されたデバイスを操作し、好きなサイン波の高さと位置を選び決定すると、周りにあるスピーカーの選んだ位置から選んだサイン波が出力される。各々インスタレーションに参加した人が選んだサイン波は、共鳴しながら鳴り続ける。サイン波は、参加した人の存在と置き換えることができ、幾つものサイン波がその音環境を作り上げていくことになる。

体験してみて思ったのは、好きな音を好きな場所から出力するという行為が、以前に鳴らされたサイン波との関係性のなかで成り立っていくということだった。つまり、一番最初、または以前の参加者によって選ばれた音に、意識しようがしまいが規定されるということで、好きな音を選んで好きな場所から鳴らすという簡単な行為であるがゆえに、様々なコト、モノ、ヒトとの関係性のなかで成り立つ自身の存在を考えざるおえなくなる。

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