「アクティブ・ヴェサムルング(スラム活動)」

HAPPENINGText: Kristy Kagari Sakai

ベルリンは今や倒産寸前だ。その空気はのお店の廃業や公園の芝生の状態から感じられていたが、最近は毎日のようにベルリンの街に響いている大勢の声とざわめきに象徴されるようになった。政府のがむしゃらな教育政策に対して学生が抗議しはじめたのだ。

5千万ユーロの予算節減、何百ものスタッフやコースの省き、はっきりしない今後の対策などと疑問だらけの政策だが、ベルリンをここまで追い詰めたのが9年前、政府がおこした銀行スキャンダルだという事実が学生を更に怒らしているようだ(もちろんドイツの経済状態も良くはないが)。しかし以前の学生運動と比べると、今回の活動はちょっと変わっている。インターネットや携帯電話が学生たちに新たな柔軟性を与え、その結果は面白く、クリエイティブなのが多い。

11月の始めのある日突然、ベルリン工業大学(TU)の建築学科のビルの前に不思議な建造物が建ち始めた。木材、プラスチックなどのスクラップがガラクタと一緒に混ざって、焚き火や集会が行われる「アクティブ・ヴェサムルング(スラム活動)」というミニ・スラム街となったのだ。

数人の教授に支持された建築学生がただでもらえる素材を探し出し、簡単な道具 ー ほとんどの場合は金槌と釘だけだったようだ ー を使って短時間で「スラム」を建てられる方法を生みだしたらしいが、これが以外にも効果のある示威作戦となった。

まず、このスラム街は西ベルリンのシャルロットンブルグの大きな交差点からとても目立つところにある。次に、ユニークなアイディアだ、とメディアから注目を浴びている(写真を取りに来ている人の様子から、このプロジェクトは他のアーティストの興味もそそったようだ)。そして最後に、教授や助手の協力を得てスラム街内で行っている講義の光景は、教育の暗い未来を表しているようで心に強く残る。

このスラムの出現はこの学生運動の構成の典型的な例だ。運動がはじまって以来、学生たちは、AGという無規律で非公式なグループを結成し、それぞれ特定の目的 ー 例えばスラムの建設(スラムバウAG)ー を持って活動してきた。これらのAGはとてもフレキシブルに構成されており、リーダー的存在もないようだが、どういうわけか学生達はお互いを見つけ出して集合している。

スラムバウAGは、今ではホンボルト大学、ベルリン自由大学にも広がり、各大学の敷地内にスラム街を建てることに成功した。それ以外にもしばしばデモの現場に現れてはスラム街を建ち上げ、その度にそれを壊す官庁たちを慌てさせているようだ。短時間しか建っていないが、無視できない目立ち具合は公衆の好奇心を刺激し、運動への関心を高めている。

TUから東に向かうと、ブランデンブルガー門とウンター・デン・リンデンがあり、そこではまた一つ変わったプロテストが行われている。冬の間装置されたアイススケート場に学生があふれ、氷の上に横たわって「ビルデゥング・アウフ・アイス・レーゲン(教育を氷の上に)」というスローガンを描いているのだ。何かの進行を妨げたり省いたりする事を表す「何を氷の上に置く」ということわざにかけた、教育の傾向への抗議だが、アート・インスタレーションといっても全く過言でない。

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