ピーター・サヴィル回顧展

HAPPENINGText: Sari Uchida

現在のイギリスで多方面に影響をおよぼしているグラフィック・デザイナー、ピーター・サヴィルの初の回顧展が、ロンドンのデザイン・ミュージアムで開催されている。ジョイ・ディヴィジョンや、ニュー・オーダーのアルバムカバーのデザイン、そして90年代には、ファッション・プロモーションにも大きく関わり、以後のファッションPRの行方を変えた張本人でもある。1978年の初仕事から今日まで、25年間の輝かしき業績を時代ごとに追って紹介している。


New Order, True Faith. Art Direction: Peter Saville, Photo: Trevor Key

展示会場の壁にはポスターが、部屋中央の細長いショーケースにはアルバムジャケットが、構想の段階から未完成のまま放棄されたもの、完成立体作品まで展示してある。インスピレーションとして使用した切り抜きや、イタリア人画家デ・キリコの画集も見られる。


New Order, Power Corruption and Lies. Original Painting: Henri Fantin-Latour, Design: Peter Saville Associates

本人のお気に入りは、フランス人画家アンリ・ファンタン=ラトゥールの花の絵を使ったニューオーダーの「Power, Corruption and Lies」だそう。トレーシング・ペーパーに包まれたアルバムなど時間と費用の掛かるデザインを施し、当時まだ珍しかったフロッピーディスクの形をしたアルバムは『制作費の元が取れるか不安だったが、幸いレコードが売れたので助かった』などユーモラスなコメントが添えられている。

1955年マンチェスター生まれ。デザイン学生時代、大流行のアナーキーなデザインに限界を感じたサヴィルは、1978年、地元のクラブナイト「ファクトリー」の洗練されたポスターを作った(会場にて展示中)。その後、ファクトリー・レコード社を設立、アート・ディレクターとしてレーベルのイメージづくりに完全な自由を与えられ、その後ロキシー・ミュージック、OMDなど金字塔となる数々のレコードジャケットデザインを産みだし、業界内では知らぬ者なしとなっていく。

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