NIKE 公式オンラインストア

ピーター・サヴィル回顧展

HAPPENINGText: Sari Uchida

1983年に自分のスタジオ「PSA」(ピーター・サヴィル・アソシエイツ)を同業のブレット・ウィッケンズと開いたサヴィルは、この頃から企業アイデンティティのデザインも引き受けるようになる。ロンドンのホワイトチャペル・アート・ギャラリーを筆頭に、本展覧会会場のデザイン・ミュージアムも手掛けている。


Colour and Form, for the Design Museum, The Peter Saville Studio

1990年初期には世界的に訪れた不況の波を受けて「PSA」も経営が行き詰まり、閉鎖した。消耗や衰弱など否定的な感情を作品に描いていたこの時期、ファッション・デザイナーの山本耀司がサヴィルに自分のファッションPRキャンペーンのアート・ディレクションを依頼、二人が持つファッションへの危機感をそのままビジュアル化した毒気の強い一連の作品が誕生した。一見無関係のイメージとコピーを組み合わせたこの手法は今でこそ当たり前であるが、当時は非常に過激だとして取引業者に反発を買い、中には取引を拒む者もいた程だった。


Suede, Coming Up. Art Direction: Peter Saville, Photo: Nick Knight, Design: Howard Wakefield at the Apartment

1993年、レコードからCDへの移行に伴いサヴィルは、CDの限られたキャンバス上での制作に不満を感じるようになる。ちょうどこの頃、彼がデザインしたアルバムを十代の頃に聴いて育った新しいバンドが台頭していた。パルプやスエードからイメージそのものの制作ではなく、自分達のバンドが持つヴィジョンを形にしてほしいと依頼があり、サヴィルは技術革新で可能となったデジタルイメージ加工を利用して彼らの願いを実現していった。

2000年以降は、企業コンサルタントとしてセルフリッジ・デパート、プリングル、EMI、ジバンシーなどを顧客に持つほか、より自分自身を投影した実験的な作品の制作に打ち込んでいる。

競争の激しい世界で生き延びていくには、単にアイディアの面白さだけでなく、常に一歩先を見据える構えが必要であることを実感させられる。シンプルだがインパクトのあるデザインは制作から20年以上経っているものでも普遍的な魅力を放ち、新鮮である。見る者にもインスピレーションを与える、奥の深い展覧会である。

The Peter Saville Show
会期:2003年5月23日(金)〜9月14日(日)
時間:10:00〜17:45(日曜日休館)
会場:Design Museum
住所:Shad Thames, London SE1 2YD
TEL:+44 (0)20 7940 8790
https://www.designmuseum.org

Text: Sari Uchida
Photos: Courtesy of the Design Museum © Peter Saville Studio

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE