フローリアン・シューミット

PEOPLEText: Sachiko Kurashina

今月のカバーデザインは、ロンドンのクリエティブ・スタジオ「Hi-ReS!」。シフトでも度々彼らの名前を目にすることがあるが、意外にも正式なインタビューは今回がはじめて。クリエイティブの最前線を駆け抜け続ける彼ら。最近制作したマッシヴ・アタックのサイトなどを含め、過去に制作したサイト、そして彼らから見たウェブの未来などについてお話を伺った。

自己紹介をお願いします。

フローリアン・シューミットです。Hi-ReS!では、アーティスティック・ディレクターとして働いています。1999年にドイツからロンドンに来て、アレクサンドラ・ユゴーヴィックと Hi-ReS! を立ち上げました。私達の出合いは、1993年。アート・スクールでのことです。当初は個人的に作品制作を一緒にやっていたのですが、次第にお金が発生するプロジェクトを手掛けるようになりました。

アレクサンドラには、ファイン・アートとグラフィック・デザインの知識が、そして私はフィルムや音楽の知識があります。実は私達は、99年以前まではウェブの仕事をまったくしていませんでした。でも、フラッシュという存在を知って、これは私達の技術を何かのメディアに合体させて、更にインタラクティビティやストリームを付け加え、ウェブで表現するチャンスだなと思いました。当時は(今でもそうですが)、これはかなりワクワクが詰まっている展望だと思いました。

現在 Hi-ReS! は7名のスタッフで活動しています。その他にも、気心知れたフリーランサーのスタッフとも一緒に仕事をしています。

Hi-ReS!は、ロンドンを拠点に活動されていますが、メンバーの国籍は様々だと聞きました。役割分担などはどのようになっているのでしょうか?

Hi-ReS!のメンバーの出身国は本当に様々で、スタジオ・マネージャーであるアマンダが、このスタジオで働く唯一のイギリス人です。あえてこうした訳ではないので、何だか不思議な感じもしますが、まぁ、自然にこういうスタイルになってしまいました。Hi-ReS!で働いているからと言って、メンバーは必ずウェブやデザインのバックグランドが必要、という訳ではありません。それは、私達が比較的小規模で活動しているから。メンバー全員が全てのプロジェクトにちょっとずつ関わり、そしてそれぞれが専門的な能力を持っているので、そのような知識がなくても成り立っています。メンバー全員が、ひとつのゴールに向かってひとつのプロジェクトを同時に行う、というのが本当は理想のワーキングスタイルですね。でも実際には、いくつかのプロジェクトが同時進行しているのが現実ですから、小さなチームをいくつか作って作業を進めます。誰かがプロジェクトを掛け持ちしたりすることもありますね。これだと時々、混沌とした状態になったりするのですが、今のところどうにかやっていけてます。

ここで少し、今まで私達が手掛けたプロジェクトについて紹介させて下さい。「ソウルバス」は、 私達がはじめて手掛けたオンライン・プロジェクトで、私達独自の実験的な遊び場のようなサイトです。その当時、私達はウェブには一体何があるのかまったく知りませんでした。そこで、フラッシュ4を使って2つ程試験的な作品を作り、概要を作成しました。ほとんど道具に近いようなサイト。サウンド、ビジュアル、そしてテキストを平等に評価するサイト。そして色がまったくないサイトを作る、というのがその概要の内容です。制作を進めているうちに、機能不全とか、衰退とか、人工的な分裂という要素を紹介したい、という気持ちが強くなってきました。とにかく、私達が今まで興味をもってきたものを、表現してみたかったんです。

バナ−広告を展示するオンライン・展覧会「クリック・ヒア!」の制作中に、コンセプトを確立させました。このプロジェクトには、広告を掲載しているにもかかわらず商品は存在しないという、ちょっと皮肉的な要素が織りまぜられていています。「誰でも参加OK」という形にしたので、沢山の「広告」を集めることができました。キュレーションを担当したのは、アレクサンドラと私です。このプロジェクトに対する注目の高さにはすごく驚いたし、これは予想だにしていなかったことでした。ニューヨーク・タイムズにまで紹介されるとは、本当に予想外でした。(このイタズラ心いっぱいのバナーはその後、広告代理店からも注目されました。今でもこれについては、なんて皮肉なことなんだろう、と思いますね。)このプロジェクトを行った結果、ダレン・アロノフスキー監督から、彼の新作映画「レクイエム・フォー・ア・ドリーム」のサイトを制作してくれないか、という連絡をいただきました。もちろん私達の答は「イエス」。その後の事は、あまり覚えていません…。

この作品を皮切りに、その後、映画や音楽に関するサイトの制作を多く手掛けました。でも常に、同じことばかりをくり返すことの危険性について意識はしていたので、しばらく映画関係サイト制作依頼は受けずに、他のプロジェクトに集中することにしました。その後、ソニー・プレイステーション、NTTデータ、三菱自動車、ディーゼル・スタイルラボ、レクサス・カーズといったクライアントと仕事を共にしました。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE