第6回 文化庁メディア芸術祭

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

2002年の日本発のメディア芸術の集大成を顕彰する文化庁メディア芸術祭の入賞作品が先月19日に決定した。この祭典は今回で6回目を迎え、日本を代表としてイベントとして、今や「アルス・エレクトロニカ」などと並ぶ世界の中のメディア芸術の核としての威容を持ちつつある。今年の受賞作の傾向はまさに今のメディア芸術を取り囲む現状を物語るものになった。

個人が作り出すモーショングラフィックスから、大規模な劇場映画やTV番組と互角に競争できるようなクオリティーと刺激を伴った内容が生まれることが当たり前になりつつあることが明らかになったのが、コンピュータグラフィックスとアニメーションの部門。


富永聡「Justice Runners」

コンピュータグラフィックスが評価される、デジタルアート・ノンインタラクティブ部門で優秀賞に入賞した富永聡の「Justice Runners」は、独特の色彩センスの世界で展開されるユーモラスな物語が評価され、東京のネットワーク局テレビ朝日のマスコット的な映像にも採用されている。

また、同部門には新進作家に提供される奨励賞には砂漠の海に巨大魚を追う部族をダイナミックに表現した阪本サクの「フィッシャーマン」が受賞、その作画とCGを融合させた個人作品による壮大な作品は多くのCG関係者が注目している中であった。


新海誠「ほしのこえ」

それはまさに多人数による労働集約型のものであると思われていたアニメーションに顕著に表れた。コンピュータで作画、着色、そして撮影まで全てできてしまう今、一人でも作り出すことが可能となったアニメーション。新海誠は長編アニメーション「ほしのこえ」を一人で制作、セルフプロデュースによる劇場公開やDVDの発売までをも実現、たった一人でブームを作り出したのだ。アニメーション部門の奨励賞になったのは現役美大生の近藤聡乃が一人で作り出した最初の短編アニメーション作品「電車かもしれない」。このようにアニメーションを作ることは普通のクリエイティブとなり、その発露が見え始めたのである。


「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」

アニメーション部門の大賞になったのは「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」。子供の主人公を通じて子供のユーモラスな仕草と大人の生態を風刺するギャグ漫画の劇場映画版であるが、日本のメジャーアニメーションスタジオとしての、大人にも子供にも楽しませようという意気込みが、多くの世代に評価される娯楽文化としてのアニメーションを作り出している奥行きが、攻殻機動隊や宮崎駿氏を擁するプロダクションなどアーティスティックな作品をさしおいた結果だ。


黒田硫黄「セクシーボイスアンドロボ」

漫画もまた日本人の文化に深く浸透したメディア芸術である。この芸術祭にはマンガ部門があり、大賞にはテレフォンクラブで人物観察をして遊ぶ14歳の女子中学生の都市冒険ストーリー「セクシーボイスアンドロボ」が大賞を受賞する一方、第二次世界大戦の旧日本軍占領地帯や旧満州国から引揚げてきた漫画家による「中国からの引揚げ少年たちの記憶」が特別賞になるなど多様性に富んだ作品が選ばれた。

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