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Rプロジェクト

HAPPENINGText: Sachiko Kurashina

個人的なことだが、私は基本的に、不必要なものを身の回りに置いておくのが嫌いである。家の中がごちゃごちゃとものに溢れているのは見た目もあまり良くないし、捨てることで空間も心もすっきりするのが好きなのも一理あるだろう。でも中には、まだ使えそうだけど、その先どうやって使っていいのかがわからずに放っておかれているものがあるのも確かだ。ものが溢れかえっている時代で生まれ育ったからこそ、その先もう一歩の段階への行きかたがわからないのかもしれない。ものが無かった時代の人達の方が、今の私達よりも広範囲でクリエイティブ性が研ぎ澄まされていたのではないか、と思いを巡らせたりもするのだ。

ハイセンスな家具やインテリア雑貨を扱うショップ「IDEE」と、クリエイターによる都市再生プロジェクト「R-project」が発足したのは昨年の暮れ。その「R-project」が、この10月に行われた「東京デザイナーズブロック2002」のプロジェクトの一つとして紹介された。最近特に耳にするようになった「Recycle (リサイクル)」「Redesign (デザインし直す)」「Rethink (再考する)」「Refine (改良する)」「Restore (修復する)」「Recreation (改造する)」といった「Re (再び、さらに、新たに…し直す、という意味)」という共通の頭文字から発想され、生まれたのがこの「R-project」。

お金をかけずに、既存するものにアイディアとセンスを組み込ませてシンプルな空間やものを作る--。これはものが無い時代では、当たり前のことだった。しかし、現代人の私達はいつしか新しいものばかりを追い求め、気付いてみればものには不自由しなくはなったが、そこに残ったのは「でも何か違う」といった悶々とした「しこり」ではなかったであろうか。その「しこり」を想像力と行動力で解決しようとしている人達の無数の試みがこのプロジェクトだ。

会場として選ばれたのは、青山通りに面した「青山マンション」。廃虚となって既に8年。そのような場所が、「R-project」の会場として選ばれるのも、自然な流れのようでうなずける。実際に入ってみて、シャワー室や、むき出しのままの水道の蛇口などを目にするまでは、そこが「かつては生活の場だった」ということを忘れてしまう程、アート色一色で包まれた空間がそこにはあった。また、生活の場がアートの場にもなるということが、かしこまらずに誰でも気軽にアートを楽しめることにつながっており、リラックスした雰囲気を作り出していた気がする。「R-project」に関する様々なアーティストの作品が紹介されていたが、作品だけではなく、その作品を作ったアーティストがフレンドリーに楽しく、分りやすく作品の説明をしてくれるのも嬉しかった。

天井からの四角いランプが、暖かい雰囲気を醸し出していたのは、大阪を拠点に活動する「EMBODY DESIGN ASSOCIATION」の岩本勝也氏の作品。ランプの下にあった椅子は、彼の作品「エコチェア」だ。半透明で固そうな見た目とは裏腹に、実際に腰をかけてみると以外にも座り易い。岩本氏の説明によると、天然素材で開発された「レジン」という樹脂が使われており、座り続けるほど、その人の体型や姿勢にフィットした形が形成されていく、とのこと。その樹脂の厚さはわずか6mm。しかしそれ以上の固さだと体に痛みを感じ、それ以下だと重みに耐えるには弱すぎる。衝撃吸収にも適した、究極の厚さなのだ。

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