アート・ウォール・ステッカー

THINGS

「東京デザイナーズブロック2002」の関連プロジェクトとして行われた「アート・ウォール・ステッカー」。これは、シルクスクリーンで作られたステッカーを使って、インテリアデザインについて考えてもらおうというもので、それぞれが好きなように貼る事で、新しいスタイルの壁紙ができるというものだ。実際、このステッカーの作者はインテリアデザイナーではない。しかし、現代アートを専門とする20名のフランス人アーティストは、伝統的なタペストリーのアイディアを再確認する事で、装飾に関する質問の彼らなりの興味深いアプローチを発表している。アーティストそれぞれは、そのステッカーは壁に貼られるためもの、というルールに沿ってオリジナル作品を制作。ステッカーのセットは最長約15メートルまでに渡って壁を覆い尽くすことができる。そのセットがあれば、あなたのタペストリーパターンをつくり上げ、お金と時間を節約することも可能なのだ。


このプロジェクトの発起人は、アーティストのジル・トヤル。彼によって今回このプロジェクトに参加したアーティスト達は集められ、またこのプロジェクトの来年の実行も可能視されている。さまざまなギャラリーやアート的な場面で紹介されているこのプロジェクト。このプロジェクトの興味深い点は何かといえば、それは買う側が、実際に自分で作品を組み立てることによって、作り手との距離を縮められるということ。アーティストのコンセプトを受け入れつつも、自分自身のグラフィックも表現できるのだ。アーティストそれぞれが、グラフィックや装飾について自分なりの分析を重ねながら、ビジョンを完成させていく。


Paysages et Aleas by HF Blondeau, Copyright 2001, Courtesy of Agora production Distribution

HF・ブロンドーのプロジェクトへのアイディアが浮かんできたのは、パリ市内の公園を犬と散歩をしていた時。「PAYSAGES ET ALLEAS (風景と偶然)」が、この作品のタイトルだ。驚嘆と嫌悪感を感じながらも、このビジョンに日々影響を受けていた彼。彼にとっては、ちかちかと無数の光が瞬く巨大な蟻の巣のように見えるパリの街の中に、人間としての動きや人生を感じたという。描かれている街は、あたかもランダムに作られているかのように見える。それと同時に街は、鋭くまっすぐな形の支配下にいるのである。ステッカーのセット内容は、青い線と黄色の長方形。組み立ても簡単で、ゲーム感覚でサイコロなどを使って、進みたい方向を決めたりしてもいいのだ。すべてのものをコントロールしたりせず、社会の一部でいることが好きであるが故に、彼はランダムな要素を作品に取り込んだのである。


Des loups dans le decor by Philippe Mayaux, Copyright 2001, Courtesy of Agora production Distribution

「WOLVES IN THE SCENERY」という作品は、フィリップ・マヨのもの。たとえ、染みの中でも、顔や何かしら見覚えのあるものが隠れていることに気付いてほしい、というメッセージが込められている作品だ。子供はよく、眠る前に暗闇の中に怪獣が潜んでいるのではないかと恐怖におびえる。それとは対照的に、例えば棚の中や、壁紙の模様の中に何かがいるとは思わないのが、大人である。つまり大人は、社会的な目的の為にインテリアデザインを利用し、それによって精神的な安らぎを得ているのである。装飾は言わば、視覚的な疎外感の形づくりである。しかし、もし本来、何かを見る側だったはずが、逆にそのものから見られてしまった場合、どうなってしまうのだろうか?もしインテリアの一部としてこのステッカーを使った場合、きっとそれは奇妙なものとして目に映るだろうし、もし自由に想像力を働かすことができれば、恐怖に対する好奇心も高まるだろう。作品を見るのではなく、見られるということで、デザイン的要素は薄れ、作品としては非装飾的なものになっているのがフィリップ・マヨの作品なのである。


OK Deco by Vincent Labeaume, Copyright 2001, Courtesy of Agora production Distribution

このイコン的な環境の中でもなお、自然はその居場所を保てているのか?という疑問の答を求めたのが、ビンセント・ ラボムのプロジェクト「OK DECO」だ。今日、装飾的な視点から言って、自然が持つビジョンよりも、ビジュアル的に素晴らしいものは無いと言っても過言ではない。そして、花や果物の形に影響を受け続けているのは、インテリアデザインなのだ。その点に注目した彼は、今日の文化的な状況に最適と思われる、自然なデコレーションを作り上げたのである。このアイデアを形あるものとするために、ラボムが行ったのは、イメージと形を統合的に全面に出すこと。この作品のプロセスを明確にすることは重要であったし、またこれは、今日の文化的環境に密接したものだ。最初の模様は、はがきに描かれていた植物の一部を削り、架空の火星の植物として完成させた。そして2番目に完成した模様も、この消費社会という要素が取り入れられている。基本的な素材となったのは、レモン味のヨーグルトが入った容器だ。実際にそのヨーグルトを食べたラボムは、そのヨーグルト会社の名前を隠し、シンプルで新しいデザインと、色を加えた。このデザインが壁に貼られたら、きっと、忘れられた植物がある空間にいる喜びを再び感じることができるだろう。


Go Home by Stephane Calais, Copyright 2001

この「アート・ウォール・ステッカー」というプロジェクトでは、著明なアーティストのオリジナル作品が、求め易い価格で供給されているだけではなく、社会とのつながりにも関連している。今のところ、このステッカーパックの販売は、メールで受け付けている他、イベント開催中はカタログも配付されているので、カタログを通じての注文も可能だ。これは、アーティストに直接利益が行くようにするための、プロジェクトの配慮によるものだ。セットの価格は各2万8千円。ただし、ダニエル・ビュレンの作品は、再編集がなされたので4万6千円での販売だ。

「東京デザイナーズブロック2002」では、アニエス・b、青山ブックセンター、UNカフェ、IDEEパシフィッックなどで開催されたアート・ウォール・ステッカー。次回は、パリのマグダ・ダニーズ・ギャラリーで12月7日から開催される。その展覧会がどのようなものになるかは、未だ未定である。

Art Wall Sticker
問い合せ:8 route de Besancon, 39600 Arbois, France
TEL:00 33 (0)3 84 66 16 07
artwallsticker@wanadoo.fr
http://www.art-wall-sticker.com

Text: Jeremie Cortial
Translation: Sachiko Kurashina

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