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シェリー・ウッド「タトゥー・ベイビー・ドール」

HAPPENINGText: Kanya Niijima


Hot Ass Baby by Sherri Wood / Tattoo art by Denise de la Cerda

ししゅう【刺繍】
糸を通した針を刺し布に模様や絵を表すこと。

いれずみ【入れ墨・刺青・文身】
肌に針や刃物で傷をつけ、墨汁・朱・ベンガラ・緑青などの色素をすり込んで、文字・紋様・絵柄を描き出すこと。

三省堂大辞林第二版では、刺繍と入れ墨をこのように定義している。針という同じミディアムを使用し、糸、あるいはインクを、生地に「入れ込む」といった似たような作業過程にもかかわらず、これら2つの表現法が一つのカルチャー上で実際に交差する事は滅多に見受けられない。そんな平行する共通点に着眼した、従来にない表現活動を展開している刺繍アーティストがシェリー・ウッドである。


Goddess Babe by Sherri Wood / Tattoo art by Jennifer Moore

「タトゥー・ベイビー・ドール・プロジェクト」と称して繰り広げられる彼女の作品はビンテージドール、いわば一種の純粋さを象徴するような、古き良き布製の人形を、アメリカ国内の女性タトゥー・アーティスト14人に送る事から始まる。人形を手にした彼女達は、各々自由なタトゥーデザインを作りあげ、その人形に絵柄を描き込む。出き上がったドールはウッドに再び送り返され、今度はウッド自身がそれらのデザインをベースに針で刺繍を行うのである。結果として、刺繍と入れ墨がもっていた伝統的な意義から全く離れた、糸とインクによる新しい概念を作りだしている。針によるハイブリッドの登場だ。

事のきっかけは、刺繍をメインに活動を続けてきたノース・キャロライナ出身のウッドが、サンフランシスコのストリート上で、タトゥーを入れた女性達を頻繁に見かけた事がインスピレーションになったという。刺繍という行為が本来もっている女性的でソフトな表現法と、その反対に、強い自己主張の象徴のような入れ墨がクロスオーバーした形を、今日の女性のアイデンティティー問題も踏まえて探究しているのが興味深い。

Contemporary Needlework: Tattoo!
会期:2001年6月6日〜7月29日
会場:Museum of Craft and Folk Art
住所:Building A, Fort Mason Center, San Francisco
TEL:+1 415 775 1861
http://www.mocfa.org

Text: Kanya Niijima

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