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「タトゥー・イン・ジャパン」

THINGSText: Mariko Takei

入れ墨、入墨、刺青、黥、文身、剳青。日本語で “タトゥー” を表現する言葉のなんと多様なことか。更に、これら日本の「タトゥー」は、装飾として、罰として、信仰や身分を表す目印として、慣習として、職業柄、身分証明をするためのものとして、様々な目的により人の体に刻み込まれてきた。何しろ3世紀くらいからずっと続いていると伝えられる長い歴史の中で発展してきた伝統だ。タトゥーの日本語表記の種類も、その目的も、いろいろあって当然といえば当然だ。更には、体に彫り込む模様もいろいろある。鯉、竜、虎、鳳凰などの動物、桜、菊などの植物、阿弥陀如来、菩薩、梵字などの仏教由来のモチーフなど、伝統的なものを筆頭に、この現代においては何でもありだ。

TATTOO IN JAPAN

そんな日本のタトゥーの美しさに魅了されて、日本の伝統と現代のタトゥーを関東、中部、京都、大阪の4つのエリア別に、大判サイズのずっしりとしたボリュームで紹介している本「TATOO IN JAPAN」がドイツの出版社よりリリースされた。ファインアートの域にまで達する日本のタトゥーの伝統を紹介したい、日本の彫り師や入れ墨を施している人たちを世界に向けて紹介したいという思いからこの本作りが始まったそうだ。

TATTOO IN JAPANTATTOO IN JAPAN
© Geoff Johnson

“手彫りマスター”彫徳の知っている限りでは東京に3人しか手彫師がいないのではないか、と本の中で解説している。伝統芸術のあらゆる分野で、その技術を後世に引継いでいける “師” と呼ばれる人の数は減少傾向にあるが、彫り師の世界も同様だ。そんな彫徳の仕事風景や完成した入れ墨 “作品” がこの本の幕開けとして最初にフィーチャーされている。彫徳の入れ墨を施しているその眼差しには、職人としての力強さを感じることができる。しかし同時に、その真剣な眼差しの中にうっすらと漂う穏やかな表情には、彫り師としての誇りと、その入れ墨への愛情ともとれる優しさが混在している。暗い色の線で縁取られた龍に少しずつ色を刺していくことは、まるで横たわっている龍に生命を吹き込んでいるかのようだ。

TATTOO IN JAPANTATTOO IN JAPAN
© Martin Hladik

人の皮膚をキャンパスに、色鮮やかなまでに彩られたモチーフの数々。クローズアップして撮影された入れ墨の模様からは、入れ墨職人の「描く」ことに対する、繊細なまでのこだわりを純粋に見てとることができる。ヌメっとした色艶の入れ墨を施された人々のポートレートは、様々な人間の内と外の「模様」を、ページをめくる度に次々と映し出しているかのようだ。

TATTOO IN JAPANTATTOO IN JAPAN
© Geoff Johnson

ひとつの本にまとめるまでに数年を要したという「TATTOO IN ART」。手彫りマスターの伝統的な入れ墨作品を展開している「関東」から、ポップなモチーフや「見せる」ファッション性あるタトゥーを数多く紹介している「大阪」のページまで、全身のものを筆頭に胸や腹、背中や腕、足の入れ墨、など、現代日本のタトゥーカルチャーを反映する、200を超える入れ墨を堪能することができる。

TATTOO IN JAPAN
仕様:32.2 x 25.4 x 4 cm、320ページ
出版社:Edition Reuss
言語:英語、ドイツ語
発売日:2008年5月14日
ISBN-10:393402064X
http://www.tattoo-in-japan.com

Text: Mariko Takei

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