ダイアローグ・イン・ザ・ダーク

HAPPENING

目の見えない世界とは、どのようなものなのだろうか?その答えを探しに、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」と名付けられたエキシビジョンに出掛けた。コンセプトは実に明解で、身の回りにある環境を室内に作り上げ、全ての光りを消し、真っ暗闇の中で盲目のガイドが来場者を案内するというもの。


僕のグループは 10人くらいのグループで、 ガイドにステッキを手渡され、それを地面につけておくように説明を受けた。また、参加者は皆、時計や携帯電話など光を発するものを全て外すように言われ、暗闇の中に入って行った。この時点で、参加者のうち2人が参加を断念し、僕もまた、どのくらいの大きさか見当もつかない部屋で、盲目のガイドの女性の説明を聞いている参加者がイライラしてステッキを鳴らす音に囲まれ、ものすごい不安を感じていた。ついに、ドアをくぐり、1番目の部屋へと入って行った。

レベル1:森林。最初に驚いたのは、自分の足の下に感じる柔らかいコケの感触だった。目に見えないために全く想像もしていなかった。強烈な森林の香りを感じ、十分に注意しながら茂みに向かって歩いていった。(こんな姿は誰にも見られたくない)部屋自体は、想像したほど大きくないようで、常に進行方向に茂みがあった。どこに行くのかも分からないまま歩いていると、ガイドの女性が自分の後について橋を渡るように説明した。2つ目の橋を渡ろうとした瞬間に橋がぐらぐら揺れるのを感じ、目が見えない状態でのバランス感覚は、何とも言えない不思議な感じだった。

レベル2:古代文明。小さな入口のある、くいとわらで出来た小屋があり、一度中に入ってしまうと、次々に人が入ってきて、出口を探すのがとても大変だった。落ち着いて深呼吸し、外に出ると幸運にも友達のアレックスに出会うことができ、鼻を触って確かめた。

レベル3:市場。石造りの鋪道を歩き、ココナッツやポテト、車(シトロエン2CV、ドイツ人は「ダック」と呼ぶ)などの物を探す部屋。突然、犬が吠え出したりする仕掛けがあったが、そんなに恐くなかった。この頃にはもう、あちこちで楽しい仕掛けがあって、一種のショウのようになってきていた。

レベル4:この部屋では、ボートに乗ってのドライブを体験。ガイドの女性がボートのベンチをステッキで叩いて、各自の座る場所まで導いてくれた。僕は自分のステッキを使って、ボートの周りに本物の水があるのかどうか確かめてみた。明らかにまだ建物の中にいるはずだったのだが、なんと水が張られていた。皆が席に着くと、ボートが出発。左右にゆっくりと動き、エンジンの音が聞こえ、柔らかな風を感じた。ガイドの女性が言うには、船が通り過ぎるのを待たなければいけなかったらしく、顔に水しぶきがかかるのを感じた。

レベル5では、ツアーが秘密めいたものへと変化した。床に横になって、ベースエフェクトのある音楽のマルチ・カルチミックスを聞くはめに。残念ながら、僕にはそれほど感動的なものではなかった。

レベル6:対話。「バー・イン・ザ・ダーク」と名付けられたこの部屋が、一番気に入った。落ち着いて会話を楽しむための部屋で、先に出発したグループの人達も椅子に座り、話をしていた。そのため、音がたくさんありすぎて方向感覚をつかむのが難しかったが、暗闇でいくらか時間を過ごした後では、だんだんと順応できるようになっていた。

まず、カウンターに行って何か飲むものをオーダーしなければならなかった。明らかにメニューというものはなく、バーテンダーに何が飲みたいかを伝えることに。ビールとチョコレートを注文し(この組み合わせに混乱しないで欲しい)、支払いをする。自分の財布を取り出したが、もちろんコインの見分けなどつく筈がない。そこで仕方なく、バーテンダーに言ってつりを貰うことにした。彼を信用することにしたが、複雑な感情が後に残った。たぶん彼等は、そうやってお金を稼いでいるのではないだろうか。
盲目の女性が、座る場所を見つけるのを手伝ってくれて、知らない人達の隣に座り、彼等がどんな風貌なのかを想像しながら会話をした。その中のひとりの女の子が、僕は背が高くて(実際、2メートルくらいある)、背が高い人は声帯も長いから声が低いのだと教えてくれた。そんなことを聞いたのは始めてだった。グラスを合わせて乾杯し(これは、まるで前からやっていたかのように驚くほど簡単だった)、ビールを飲み、暗闇の中での会話を楽しんだ。
暗闇から出ると、眩しいフラッシュのような光を感じ、全ての光に慣れるまでしばらく時間がかかった。その日1日は、いつもの現実世界が強烈なものに感じた。

今回のこのエキシビジョンは、盲目であるということについては、僕にとってそれほど印象深いものではなかったが、普段は目に見えるものに支配されているその他の感覚を発見する機会となり、実に興味深い経験をすることができた。

Text: Andrew Sinn from Fork Unstable Media
Translation: Mayumi Kaneko

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