ミチコ・クサキ
PEOPLEText: Aki Ikemura
ミチコ・クサキと名乗るフランス人アーティストのステージが行われた。コンサートが行われた場所は「PULP」(パルプ)という、パリジャンなら誰でも知っている、ポピュラーな、しかし普段はレズビアン専用のディスコだった。
結い髪のどこにでもいそうな典型的なフランス人の女の子が、ステージの脇でマイクを持って歌い始めた。これが今日のメインでプレイするゲスト? カラオケのようにさえ見える外れかかった音程、リピートされるよくわからない歌詞、質の悪い音…。こんな風に書くと悪い印象を与えかねないけれど、これら全ては彼女の音楽をとても未来的なものにしていた。
この “カラオケのような” というスタイルは、サム&ヴァリー を思い出させた。最初は唖然としてしまうような音程なのに、その始めに来る印象とは裏腹に、どんどん引き込まれてしまうような不思議な魅力を持っている。
予想は当たった。サム&ヴァリーを聞いたときと 同様、いつしか私は、ミチコ・クサキの音楽に酔いしれていた。(ミチコ・クサキの名付け親がサム&ヴァリーだったということを後で知った。)
どうみても西洋人なのに、ミチコ・クサキという名があまりにも平凡な日本人名であるということから、彼女が純粋な西洋人であると認めることができなかった。
彼女の中に「日本」を探してしまう。ジェスチャーがどこか日本人っぽいし、ちょっとシャイな感じも東洋の香りがする。クオーターなのかもしれない。色々な想像が過ぎった。後日、彼女にミニインタビューをした。
音楽を始めたきっかけは何ですか?
小さい頃、ピアノを習ってたんですが、電子音楽を始めたのは、3年前の夏休みにシンセサイザーを持って出かけたのがきっかけです。
何故、ミチコ・クサキという名前なんですか?
アンジェリカ・ケーラーマンというレーベルからプロデュースされているのですが、そのレーベルメイト、サム&ヴァリーに私の名前を日本語に訳してもらいました。“ミチコ”は、もう一人のレーベルメイトの QUEEN OF JAPAN(ミチコ=皇后陛下)から。
あなたのジェスチャーなどに何か日本的なものを感じるのですが。
そうですか? 日本に行ったことはまだありませんけど。
あなたにインスピレーションを与えるものは何ですか?
今の自分の回りにあるもの。竹村延和、CUVX CUBA、JACNO など。
音楽以外に興味のあることはありますか?
パリ8大学でアートの勉強をしていました。(コンテンポラリーアート)
今後の予定を教えてください。
パリでは7月に、「PLACARD」(プラカード)というアパートでのプロジェクトに参加する予定。9月にはブリュッセルでコンサートに参加します。
Text: Aki Ikemura