フィル・コードリー

PEOPLEText: Nicolas Roope

例えば、高度に非科学的で気まぐれな方程式を用いて「究極の男」というものを作ってみよう。

彼は、まさにこの時この瞬間において唯一の存在であり、それゆえ時が過ぎゆくにつれ彼は自分の存在の理想から離れ始めている。今、こうして文字を書き連ねている間も彼の完璧なまでのフォルムが失われ、時間が彼の力と究極のステータスを奪い取る。

彼のことをフィル・コードリーと呼んでみよう。名前はあくまでも便宜上の問題であって別に記号でもいいんだ。君が付けたきゃ付ければいい。

バックグラウンド:
フィルは1968年にウェールズの小さな炭坑町でメービスとミア・コードリーの間に生を受けた。ミア・コードリーはバングラデシュで育ち、50年代に労働力不足という流れもあいまって、イギリスへ渡った。イングランドは明るい楽しいところで、ぜんぜん陰気でも、灰色でも、憂鬱でもなく、素晴らしいところだと言われることを全部鵜呑みにして・・・。
まだ子供ではあったけど、ハイスクール時代のフィルは自分のベッドルームを拠点にレコード・レーベルを運営し、当時学校の友達だったスーパー・ファーリー・アニマルズや今やウェールズのロック伝道師、マニック・ストリート・プリーチャーズを売り出した。
配管工の訓練をうけたあと、フィルはカーディフへと移り住み、その後ロンドンにやってきた。

ライフスタイル:
ユーストンにある住まいは、身障者ステッカーと足をひきずる演技で手に入れた、なかなかのアパート。もちろん格安。
フィルの車は1977年型トヨタセリカで、いまだにイギリスの名女優エマ・トンプソンとの衝突事故の名誉の傷をとどめている。
仕事(ロンドンの5大広告エージェンシーのニューメディア戦略コンサルタント)はさておき、フィルはアウトドアに興味があるようだ。ミニゴルフ、スノーボード、ドラッグカーレース、屋内ではもっぱら酒、タバコ、ダンスとケーブルテレビ。
君もサンズベリーでパブのあとの飲み過ぎの、彼がイズリントンのオールナイトのスーパーマーケットで食料品を買いに立ち寄るのを見かけるかもしれない。
ビーク・ストリートのコーヒーハウスでは常連で、友人であるアンチロムのニックにばったり出くわしたりもする。

ファッション:
これはもう、グッチ三昧。
彼はアレキサンダー・マックイーンの服を買ったみたいだけど、ベッドルームの外で着るには何て言うかちょっと…。
今日は、たぶんラフ・シモンズのシャツにYMCのパンツそしてグリフィンのジャケットというところかな。
唯一のちゃんとしたモノといえば、彼女からカーディフにいたときにもらった不格好なブレスレット。靴下は肌色でくるぶしにはナイキのマーク(透明ソックス)。
そして間違いなく靴はグッチ。これは彼の持っている靴がグッチしかないのでほぼ決定だ。その他の靴といえば、木曜の夕方のサッカー用のナイキのみだし、さらにジョン・スメドレー‎のパンツは彼のラッキー・アイテムと信じこんでる。
タバコは健康に好くないと知っていても、フィルはきついピーター・ストイフェサントをふかしているようだ。

ロマンス:
カーディフで以前の恋人と別れて以来、彼はシングルライフを選んできた。虎の模様が入ったベットカバーと大きなベッドもあるのに。

Text: Nicolas Roope
Translation: Satoru Tanno

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE