佐藤雅彦展 新しい × (作り方+分かり方)

HAPPENINGText: Alma Reyes

展示品の一部には、富士フィルム・フジカセット「オーディオ・フェア」用に制作されたヘッドホン「サウンドヘルメット」(1980年)や、伝説的電子音楽バンド・イエロー・マジック・オーケストラを起用したフジカセット広告のプロモーション用に配布された「YMOテクノバッジ」(1981年)など貴重な作品が含まれる。


[上]ポリンキーの秘密(湖池屋)1990年[下] バザールでござーる(NEC)1991年 ともにアドミュージアム東京所蔵

最初の展示室にあるミニシアターでは、佐藤の広告制作における独自の「ルール」を反映した約七十本のコマーシャル映像が上映される。「ルール」の基本にあるが「音から始める」という考え方で、映像よりも効果的な注意喚起手段として音とリズムを組み込む技法だ。こうした手法は、「ポリンキーの秘密(湖池屋)」(1990年)や「バザールでござーる(NEC)」(1991年)などのCMで確認でき、彼のCMは絶大な成功を収めた。

1990年代後半に入ると、佐藤は「ルールからトーンへ」という変化を迎える。この手法は、魅力的なシナリオに響き渡る心地よい音に包まれた独自の世界観を醸し出し、製品のブランドイメージを強化する。この革新的な方向性は、モルツ(サントリー)や、カローラII(トヨタ)のCMで顕著に表れていた。


I.Q Intelligent Qube(SIE・プレイステーション用ソフト)

佐藤は1994年に株式会社電通を退社し、自身の企画事務所TOPICSを設立。自身の「トーン手法」を応用した他メディアの展開を模索した。1997年にはソニー・コンピュータエンタテインメントと共同でプレイステーション向けテレビパズルゲーム「I.Q」を開発し、商業市場で大成功を収めた。本作は、1998年の文化庁メディア芸術祭ではデジタルアート(インタラクティブ)部門優秀賞を受賞している。


ピタゴラ装置(NHK「ピタゴラスイッチ」より) 画像提供:横浜美術館

おそらく最も魅了される展示は「ピタゴラ装置」だろう。ここでは2002年から放送されたNHKの教育番組「ピタゴラスイッチ」でお馴染みの装置4点が展示されている。佐藤は以前から収集してきたテープ、ドミノ、ブロック、水筒、缶など無数の日用品や雑貨を用い、軽快なジングルに合わせて物体が連続的に連鎖する動きを考案した。このコンセプトは子供から大人まで、楽しみながら思考を刺激する。アイテムの正確な配置と動きの完璧なタイミングには、アルゴリズム・数学・物理学の研究が活かされている。

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