EXPO 2025 大阪・関西万博
「いのちめぐる冒険」館は、メカデザイン等を手がけるビジョンクリエイター、河森正治のプロデュースによる、シグネチャーパビリオン。人間、自然、宇宙の関係を再構築し、人間中心主義を超越した未来社会を強調、生命のサイクルを巡る没入型の多感覚的な航海を提供する。生物を模したモジュール式の「セル」で構成されたパビリオンの印象的な建築の中には、「超時空シアター」があり、来場者はミクロから宇宙まで、相互につながった領域を旅することができる。
河森正治プロデュース「いのちめぐる冒険」館
「超時空シアター」では、作曲家・菅野よう子との共作による2つの没入体験が紹介される。まず、「499秒 わたしの合体」は、最先端のテクノロジーと儀式的な感性を融合させた、野心的で深く象徴的なインスタレーションだ。もうひとつは、音、映像、触覚的振動が融合し、生命のリズムとエネルギーを讃える全身体験を生み出す画期的なインスタレーション「ANIMA!」どの展示も、惑星網の中での私たちの位置について考察を促す。
「いのちめぐる冒険」館は、万博の指針であるテーマの証であり、存在の奇跡との深遠で感動的かつ知的な出会いを提供し、来場者に私たちを取り巻く世界と調和して生きることの意味を再考するよう促す。
落合陽一プロデュース「いのちを磨く null²」館 © 2024 General Incorporated Association Digital Nature and Arts
メディアアーティストの落合陽一は、シグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」で、デジタルテクノロジーによってますます形作られる世界におけるアイデンティティと存在の概念を再考する。建築家・豊田啓介とのコラボレーションによりデザインされたこの未来的な空間は、物理的な自己とデジタルな自己の境界が溶解する「Mirrored Body™」というコンセプトを体現している。パビリオンの外壁は、ゆらめきとうねりのある鏡の膜で覆われ、周囲の風景を反射して歪め、観察する行為そのものを詩的な体験に変えている。
中に入ると、来場者はデジタルミラーのホールに遭遇し、専用アプリで撮影された自分の似顔絵が、生きたアバターに変身するインタラクティブなスクリーンの没入型シアターとなる。これらのアバターは、AIによって形作られ、生成的な質問に対する来場者の回答によって豊かになり、会話し、独立して行動する自律的なデジタル分身へと進化する。鏡が波打ち、デジタルボディが増殖するにつれ、この体験は、プレゼンス、自我、そして人間関係の未来についての瞑想となる。
落合の「null²」は大胆な芸術的主張であり、アイデンティティが変幻自在であり、身体がデータであり、私たちの現実感そのものが、無限にきらめくデジタルミラーのフィールドを通して屈折しているこの時代に、生きていることの意味を再考するよう促している。
パソナ ネイチャーバース館
パソナ ネイチャーバース館は、「いのち、ありがとう」をコンセプトにシンプルで深いメッセージを体現している。板坂諭によってデザインされたこのパビリオンは、アンモナイトから着想を得た螺旋状のフォルムで、生命の回復力と相互のつながりを象徴している。パビリオンを構成するモジュールは、万博終了後に淡路島に移設される予定であり、持続可能な構造となっている。
内部の「いのちの歴史ゾーン」では、岡本太郎の「太陽の塔」の精神を受け継ぎ、根から葉へと生命の歩みをたどる壮大なインスタレーション「生命進化の樹」から旅が始まる。「からだゾーン」では、澤芳樹博士の監修による脈打つiPS心臓など、再生医療の驚異に出会うことができる。その他、サイバーダイン社のHALサイボーグスーツ体験や未来的な睡眠技術など、人間とテクノロジーの共生の可能性を垣間見ることができる。
鉄腕アトムとブラック・ジャックが導く「こころ・きずなゾーン」は、共感、相互支援、そして社会の未来についての考察を促す。パビリオンは、特別ショートムービー『ネオアトム誕生』から始まり、千住明の音楽による宇宙的な物語と感情的な共鳴が融合したキネティックLEDキューブ・スペクタクル、ネイチャーバース・ショーでクライマックスを迎える。感謝の気持ちとつながりこそが、活気に満ちた持続可能な未来の根源なのだ。
2025年大阪・関西万博では、これらのパビリオンの他にも、万華鏡のような国別・テーマ別パビリオンが用意されている。「大地から天空へ」をテーマとするUAE館は、ナツメヤシ建築と宇宙探査のビジョンを融合させている。北欧館は持続可能性を唱え、カナダの氷にインスパイアされたデザインは新たな息吹を感じさせる。アメリカ館の大胆でモダンなフォルムは産業界の野心を反映し、イタリア館の「美の研究所」は波のような屋根の下で伝統と革新を称えている。ベルギー館は3層にわたって水を探求し、中国館の巻物型パビリオンは伝統とテクノロジーの調和を体現している。それぞれのパビリオンは、創造性と配慮によって形作られる文化、願望、共有する未来についての物語を語っている。
2025年大阪・関西万博は、国家とイノベーターが人類の未来を構想する壮大な舞台として登場する。各パビリオンは、私たちが共有する時代を定義する夢、課題、コミットメントを垣間見ることができる。相互の結びつきが強まる世界において、活気に満ちた持続可能な未来を形作るのは、技術力だけでなく、共感、創造性、そして生命の複雑な網を尊重する心なのだ。来場者は、これらの想像力豊かな空間を旅する中で、明日の種が今日の夢の中に蒔かれるような、集合的な物語に思いを馳せ、つながり、貢献するよう誘われる。2025年国際博覧会は、人間の想像力の輝きと自然そのものの静かな回復力によって形作られる、無限の可能性を秘めた場所としての世界を再想像するための招待状である。
EXPO 2025 大阪・関西万博
会期:2025年4月13日(日)〜10月13日(月)184日間
会場:大阪 夢洲(ゆめしま)
https://www.expo2025.or.jp
Text: Sébastien Raineri
Translation: Saya Regalado
Photos: Sébastien Raineri