アレック・ソス 部屋についての部屋
HAPPENINGText: Alma Reyes
ルーム3で紹介されている『Dog Days, Bogotá』(2007年)は、ソスの最も個人的な自伝的作品のひとつである。彼はコロンビアのボゴタに2ヶ月ほど滞在し、街並みや町の人々を探検した。このセクションに含まれる他の写真シリーズには、アメリカ社会から疎外された人々を撮影した『Broken Manual』(2010年)、さまざまな性別、年齢、人種が集まるコミュニティーの交流や社交行事を撮影した『Songbook』(2015年)がある。モノクロ写真のエッセンスは、古い報道写真を想起させる。
アレック・ソス《Untitled 07》〈Dog Days, Bogotá〉より、2003年、東京都写真美術館蔵 © Alec Soth
ソスはファッション写真にも携わるようになった。《Paris/Minnesota》(2007年)はマグナム・フォトが発行する写真集のために制作された。ルーム4では、高級ブランドのショップや、ファッションショー、ホテルの部屋でのカットを見ることができる。ここでは、2015年にニューヨーク・タイムズ・マガジンのためにソスがパークハイアット東京(新宿)に滞在した様子も公開されている。ソスは茶道家、昆虫研究家、女性アイドルグループなどのゲストを部屋に招き、ポーズをとらせた。ソスの《Park Hyatt Hotel, Tokyo (self-portrait) 》(2015年)は、とても魅惑的で、ベッドに横たわり、窓に映る彼は、映画『ロスト・イン・トランスレーション』のスケッチのように、東京の夜景の上に浮かんでいるように見える。
アレック・ソス《Anna, Kentfield, California》〈I Know How Furiously Your Heart is Beating〉より、2017年、東京都写真美術館蔵 © Alec Soth
ルーム5に展示された『I Know how Furiously Your Heart is Beating』シリーズ(2019年)では、いつもの写真紀行的なアプローチから逸脱し、ソスは自ら世界中の人々を訪ね、最もプライベートな瞬間を撮影した。静謐な空間で被写体から醸し出される親密さが大きな魅力となっている。「ポートレイトや風景、静物などを定期的に撮影しているが、最も親しみを感じるのは室内の写真だ」と作家は述べている。《Anna, Kentfield, California》(2017年)は、最も象徴的な作品のひとつで、彼は屋外からレンズを室内に向け、窓の外の自然の景色と微妙に調和する背面の壁に這う蔓の中で、振付家のアンナ・ハルプリンを据えた。
アレック・ソス《Still LifeⅡ》〈Advice for Young Artists〉より、2024年、作家蔵 © Alec Soth
最後にルーム6では、『A Pound of Pictures』シリーズ(2022年)と最新作『Advice for Young Artists』(2024年)にたどり着く。後者の作品集は、アメリカの美術学校における学生たちと彼らを取り巻く物体の情景を描いている。《Still LifeⅡ》(2024年)は、学生の人生の段階を横断する小道具や用具のリズミカルな構成を例証している。
ソスの写真はドキュメンタリーというよりも叙情的で、それぞれの被写体が映し出す感情や物語について、私たちに生の想像力を与えてくれる。
Alec Soth: A Room of Rooms
会期:2024年10月10日(木)~2025年1月19日(日)
開館時間:10:00 – 18:00(木・金曜日は20:00まで)※1月2日(木)と3日(金)は18:00まで
休館日:月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)、年末年始(12月29日〜1月1日)
会場:東京都写真美術館
住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
https://topmuseum.jp
Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
