ポール・ケアホルム展 時代を超えたミニマリズム

HAPPENINGText: Alma Reyes

1952年に美術学校を卒業したケアホルムは、家具デザイナーとして活躍する一方、デンマーク王立美術アカデミーで教鞭を執り、1980年に51歳で他界した。この間、彼は様々な家具を製作し、そのほとんどはアイヴァン・コル・クリステンセンによって製造・販売された。二人の生涯の共同作業と密接な関係を示す写真が、研究用のドローイングや、ケアホルムのキャリアにおいて重要な役割を果たした写真家ケルド・ヘルマー・ペーターゼンの写真とともに展示されている。また、アカデミーで出会ったケアホルムの妻、建築家のハンネ・ダムも紹介されている。ハンネが設計したルングステッドの自宅の写真には、月見台のあるテラスや寝室の下駄と草履など、日本の伝統的な影響が見られる。


ポール・ケアホルム《PK 24》(1965年)織田コレクション/北海道東川町蔵 撮影:大塚友記憲

同じ部屋には、鏡面仕上げのステンレススチールのフレームに革のクッションを組み合わせたシェーズラウンジ《PK 24》(1965年)がある。長くカーブした有機的で流れるようなフォルムで、しなやかなラインを表現し、快適性と美的機能性の両立というケアホルムの哲学を補完している。ハンモックチェアのフォルムは、デンマークの黄金期を代表する家具デザイナー、コーア・クリントが1933年に発表したデッキチェアや、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ペリアンが1928年に発表した《LC4(B306)》からインスピレーションを得たと言われている。


ポール・ケアホルム《PK 26》(1956年)織田コレクション/北海道東川町蔵 撮影:大塚友記憲

重厚な黒を基調としたメインホールには、ケアホルムの織田コレクションの家具がずらりと並んでいる。素材と製造技術によって家具のフォルムの本質と効率を定義するという、ケアホルムのもうひとつの本質的な哲学を目の当たりにすることができる。これは印象的な赤い革張りのソファ《PK 26》(1956年)に見られる。ワイドな座面のこの椅子は、マットなクロームメッキを施したスプリングスチールにキャンバスのウェビングが施されている。椅子は背もたれに取り付けられたスチールの脚で壁に取り付けられている。スチールのフラットバーは座面の下から後方に伸びており、完璧なバランスを保っている。この椅子は正面から見ると空間に浮いているように見えるが、これは家具が建築の構造的な要素であることを証明するためにケアホルムが行った技法である。


ポール・ケアホルム《PK 22》(1956年)織田コレクション/北海道東川町蔵 撮影:大塚友記憲

1957年の第11回ミラノ・トリエンナーレでグランプリを受賞したラウンジチェア《PK 22》(1956年)も特筆すべき作品だ。ケアホルムは側面のスチールをなくし、代わりに座面の下の脚と脚の間の空間を強化した。脚は一枚のバネ鋼で構成され、背もたれは最小限のスチールの骨組みで、革で覆われている。ミース・ファン・デル・ローエのバルセロナチェアを彷彿とさせるが、レザーの座面と背もたれが軽いため、座面が浮き上がるような印象を与える。

続きを読む ...

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
葛西由香
MoMA STORE