奈良・町家の芸術祭 HANARART(はならぁと)2013

HAPPENINGText: Chiaki Ogura

町が一体となって作り上げる、奈良の芸術祭。本年度で3回目となる「HANARART はならぁと」は、テーマを「アート×地域の恋鎖反応」として、奈良県下を8エリアに区分けし、2ヶ月半をかけてリレー方式で繋げていく。町家の屋内外をつかって、町ごと仕掛けていく取り組みだ。人が人を呼び、アートが地域に恋をし、来場者が奈良に恋をする。そんな愉快な連鎖反応が生まれて、関わる人たち皆が「はならぁと」を楽しんでほしい、そんな想いが込められている。

はならぁとは、大きく4つの部門にわかれている。“こあ”・“えあ”・“もあ”、“玉手箱プロジェクト” だ。今回は、メインとなる「はならぁと こあ」の紹介をしたい。展示会場は、奈良県大和郡山市。享保9年(1724年)から最古の金魚養殖の歴史を持ち、“金魚が泳ぐ城下町” として、金魚が町のシンボルとなっている。その独自の歴史や文化と向き合い、「なぜ今この場所なのか」を追究した現代アート展である。キュレーターは、大阪国立国際美術館主任研究員の中井康之、はならぁと実行委員長の野村ヨシノリにより公募から計3組が選ばれた。キュレーターごとに3つのゾーンに分かれ、それぞれのコンセプトで開催された。

奈良・町家の芸術祭はならぁと2013
「ケノハレ」Antenna(アンテナ)

堺町ゾーンのタイトルは「アイダカラダ」。キュレーターの奥中章人は、サミュエル・アンドレーやみなみりょうへいなど4カ国16組のアーティストと共に、人々の関係性と身体性のダイナミズムを読み解くプロジェクトを展開している。展示会場で様々な対比やコントラスト・境界線を意識した空間作りがなされている。アンテナの作品は、かつて柳田國男が書いた日本古来の世界観「ハレとケ」をテーマにしており、「神性や神事」を連想させる空間を、この場にあった古い木枠や古い既成品などの “個体” を用いて制作した。対して、大西康明の作品は結晶を扱い、存在するものと存在しないもの狭間の世界をテーマにし、気候環境の影響(温度や湿度)を取り入れ、「自然界の現象や、景色を連想させる空間」を、ありふれた素材(針金、接着剤、尿素)を用いて “流体” 的な作品とした。重量や重さが一定ではない日々変化していく自然現象をはかなく描き出しているといえよう。アンテナの作品が構造的な個体に対して、大西康明は、有機的な流体という点も対を意識させるもの。浅井邸酒蔵において2つの空間を活かして作られたこの2作品は、まさにその対比構造の象徴でもあり極みともいえる。

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「スターダスト・ボーイズ」吉永ジェンダー

吉永ジェンダーは堺町の家において、入口〜土間・中庭までの景観の流れを意識し、空間の面白さと境界線を意識した作品を制作。デイリーは、郡山城のお殿様が船に乗って堺町の家に住む愛人に会いに来ていたという地元に伝わる恋愛物語にインスピレーションを受け、サイトスペシフィック・アートを展開している。

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「Home Theater」吉原啓太

吉原啓太は浅井ガレージにて、1ヶ月間の現地制作を行った。その間の制作中の生活を天井カメラから常に撮影し、「展示のための一番最小限な行為」としてスクリーン映し出すことで、人間の基本的な存在や生き方は何か、訴えかけている。

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