石倉美萌菜

PEOPLEText: Satsuki Miyanishi

あなたの作品の背景となっている、学生時代見ていたアートとはどのようなものだったのですか?

私の学生時代は予備校と短大、CAIアートスクールに通っていた頃で、短大とCAIアートスクール夜間コースは同時に通っていました。
予備校時代はよく先生に見せてもらっていたのがマティス。アメリカの抽象表現主義あたりの作家やルドン、ニコラドスタールなども大好きでした。
大学は本州の芸術大学を受験したので、そのときは思いっきり具象の試験でしたが、大学に入ったら抽象画を描くんだと決めていました。大学に落ちて、短大とCAIアートスクールに通い始め、アートというのは立体と絵画と、それだけではないとやっと気がつきました。20歳頃に。
もともとミーハーなので若いアーティスト、のびあにきさんや、中山カメラさんなど年齢の近い人たちの活動を知り、ネットで追っかけをしていました。

影響を受けたアーティストはいますか?

浅く狭い知識でお恥ずかしいし、影響を受けたというのもおこがましいのですが、制作の際に良く見るのは会田誠さん、またジェニー・サヴィリーさん、とかルシアン・フロイドさん。ピエール・ボナールさんは真似しようと思って毎回とても失敗します。横尾忠則さんも好きです。人生で一番最初に好きになったのは円山応挙さんです。
あとは予備校生の時に日本の青春パンクと括られるような類のバンドや、他にも様々な日本の音楽を知り、その辺りに物凄い影響を受けていました。

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2010年に上海でのアーティスト・イン・レジデンス事業で創作されたそうですが、ご自身の中で変化はありましたか?

出発が初めて個展を行った3か月後で、しかも初めての海外だったので大きな変化となりました。生まれて初めてアーティストとして扱われて、とても緊張しました。英語も中国語も話せないので日本人スタッフ以外とはコミュニケーションをなかなか取れないし、もともとコミュニケーションが苦手なのでひいひい言っていました。
札幌での初個展でさえ、開催する前には精神的におかしくなりそうだったのに、この先もしも仕事をもらって制作や展示を行うことになったら私はどうなってしまうのか。こんな精神では絶対無理だと思い「今のうちにアートなんてやめてしまおうか」と思い煩っている最中の渡航でしたので、悩むことも多かったです。そんな中、なんとか作品を作ることができたので、その経験が今の自分を奮い立たせることが多いです。
また、アートマーケットの存在を実感する良い機会となりました。日本ではあまりそういった体験がなく、アートマーケットというのが竜宮城みたいなものだったので、オークション会場やギャラリー・スタジオが大きな空間を所有し、それらが集合して売る気まんまんの様子をみると今まで自分の作っていたものって何なのだろうという気持ちにもなりました。

今回のCAI02企画展である個展「さぁこの先どうしよっか」のテーマについてお伺いできますか?

今回の個展のお話をいただいた時もやはり続けるか否かということを考えている最中でした。そんな中、東日本大震災が起きて、以前からの自分の悩みなのか、震災の衝撃の為なのかわからない不安と恐怖によって情けない事にさらに制作ができなくなってしまいました。さらに絵が下手になり、作品を作るのを一生やめてしまおうかと悩みました。辞めたらどうするんだ、この先死ぬまで何をしたらよいのか、とさらなる不安に駆られ、呆然とした状態のときに浮かんできた「この先どうしよう」というこの言葉に少し未来への希望が見える気がしてこのタイトルにしました。少し前の自分への落とし前をつけてこの先へ少しでも前進したいとあがいている展示です。この先の未来は残念ながら積極的に提示はできませんでした。しかし前に進む足がかりはできたように思います。石倉美萌菜に喝を入れたくなるかもしれないし、同じ世代の方はもしかすると共感できるかもしれません。

作品とともにあなた自身も成長を続けていると思いますが、今後ご自分がどのようになっていきたいと思っていますか?

先日妹の夢枕に亡くなった祖父が立ち、私に向けて「下の方でやるだけだったらそれなりにいいところまで行けてアート以外のことも楽しむことはできるけど、上を目指すと辛い」と言ったそうです。スピリチュアルなことは信じていないのですが、それだけは何となく信じてしまってその事を聞いて凹みました。しかし、どうにか辛い目にあえるところの入口だけでも見てみたいと思っています。現代っ子らしく辛いのは嫌いですが。
また一生の目標ですが聡明な人になりたいです。アーティストとしてもちろん食べていけるようになるというのが目標ですが、そんなことまだまだ言えるような立場ではないので「自分アートで食って生きたいんだ!」ということが堂々と言えるようになるのが目下の目標です。あと今の100倍アートが好きになりたいです。

石倉美萌菜個展「さぁ この先どうしよっか」
会期:2012年10月6日(土)~27日(土)
時間:13:00~23:00(日・祝日休廊)
会場:CAI02
住所:札幌市中央区大通西5丁目昭和ビルB2
TEL:011-802-6438
主催:CAI現代芸術研究所
https://www.cai-net.jp

Text: Satsuki Miyanishi

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