上田義彦 写真展「鎮まる」

HAPPENINGText: Yuko Miyakoshi

東日本大震災 3.11 から間もない頃、花人・川瀬敏郎と写真家・上田義彦のコラボレーションによる「鎮まる」の撮影は行われた。

『花は花の事情で己から鎮まる。それは人間にとって絶対他者であるが故に、人を救うことができる。』

編集者/クリエイティブディレクターの後藤繁雄氏は、川瀬氏のこのことばが「畏怖すべき自然が逆説的に人を換気させる倫理のありようを問いかける」と書いている。(アートメディア「Tobi」本展覧会の特集より)

上田義彦写真展「鎮まる」
花:枯蓮の葉 器:古代ローマ時代 テラコッタ製足形残次 個人蔵 © Yoshihiko Ueda

川瀬氏は1948年京都生まれ。幼少より最古のいけばな流派 池坊の花道を学び、日本大学芸術学部を卒業後、パリ大学へ留学。帰国後は流派に属さず、いけばなの原型である「たてはな」と千利休が大成した自由な花「なげいれ」をもとに、花によって「日本の肖像」を描くという独自の創作活動を続ける。

上田氏は1957年兵庫県生まれ。ファッション写真に始まり、広告写真、コマーシャルフィルムの撮影や演出を行いながら、並行して、数多くの写真作品を撮り続けている。代表作品として、アメリカインディアンの聖なる森を捉えた「QUINAULT」、舞踏家・天児牛大を撮影した「AMAGATSU」、自身の家族を写した「at Home」、ミャンマーの僧院を撮影した「YUME」などがある。

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花:檜、杉の皮 器:金銅華瓶 (室町時代)個人蔵 © Yoshihiko Ueda

今回の展覧会では、それぞれに独自の道を歩んできた花人と写真家が後藤繁雄氏によって引き合わされ、コラボレーションが叶った。川瀬氏が室町/鎌倉時代の仏具に枯蓮の花や枯杉、樒(しきみ)などの祈りの花を活け、上田氏が撮る。この展覧会には、被災者の方々への鎮魂の想いと、災いが鎮まるようにという祈りが込められている。

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