リチャード・バイヤーズ
PEOPLEText: Joanna Kawecki
メディア・アーティストとして活動しているリチャード・バイヤーズは、世界各国のアーティストたちとコラボレートして光や映像を用いた映写作品を生み出し、人間が音や光と相互に作用し合って感動を伝えている。
リチャードはベルリン、東京、オーストラリアなどでグループ展や個展を開催してきており、仲間達とのコラボレーションも盛んである。多くの才能を持つ彼だが、それには彼がこれまでに経験してきた作品が大きく関係しているだろう。イラスト、絵画、彫刻、さらには10年以上の月日をシドニーの工業デザイン分野で過ごしてきた。
こういった背景が、彼の作品作りやコラボレーションに対する幅広い態度にも表れており、彼に会えば影響を受けずにはいられない。最近の中心プロジェクト「音・伝達・光」は注目に値する、見逃せないものの一つだ。
Richard Byers solo work Berlin © Richard Byers
クリエイティブな生活を送る中で、光を投写しての作品作りを始めた経緯についてお聞かせ下さい。
「クリエイティブな生活を送る」といっても、自分では僕の人生をそういう風に考えた事は無いですね。でも確かに人生っていうのは、常に創造性を含んでいるものだとは思うけどね。
長年プロダクトデザインの世界で、デジタル・コンセプト・アーティスト、それからクリエイティブ・ディレクターとして働いてきて、その間さらに週一度営業している「フリジッド」というクラブで、ビデオ・アーティストとしても活動してきました。その後、活躍の場がクラブから美術館、画廊、シドニー・オペラハウス(作品の上映は建物の中と外両方で)へと広がっていったのです。大抵の場合は、映写機材を使用してるのですが、一般に使われている画面アスペクト比の4:3を使わないのが僕のやり方の特徴の一つです。デジタルのマスキング処理を利用して、スクリーンの形がわざと不揃いになるようにしたのです。その場に合わせた形のスクリーンを使わず、できるだけ周りの環境と映像とを同化させるためにね。実を言うと、僕が気に入ってるのは、スクリーンを使わずに壁や地面、天井に直接映写する手法です。気に入っているうちの一つに、スクリーンを取り外して近くのあちこちのものに直接映像を映し出すというイベントがあるのですが、これは最近計画してる作品に面白い形で繋がっていっています。
10年の間でそういう流れになったのは、まったく自然なことでしたね。夢中だった趣味の一環から始まって、副業だったものがいつの間にか僕の生活の一部、収入源、そしてもちろん情熱そのものになったのです。熱中できる、ということが何よりで、何をしようが、もしそれに夢中なら上手くいくだろうし、素晴らしい機会や経験に巡り会えるはず。まず熱中できるものを見つけるのが一番大変ということですね。
Sound.transmission.light Project Berlin © Richard Byers
「音・伝達・光」というプロジェクトがあるのですが、これはオン・ヤウ・ルイという、今はベルリンに住むオーストラリア人アーティストとのコラボレーションで生まれたものです。2009年に2人で考えたのは、紙の表面に光と映像を映写してそれが音に反応する、といったものをつくろうということでした。ベルリンのルーフ・トップス・スタジオでさらに案を具体化した後、僕は東京に行って「音・伝達・光」の初めてのライブパフォーマンスを、知り合いだったミュージシャンのツダ・ユキコと行いました。彼女が他にも2人のミュージシャンの友達をプロジェクトに参加させてくれて、2週間のうちに彼らオリジナルの歌を半ば即興で作曲したり。僕も、彼らの声や弦の音色、管楽器の曲の周波数を音に反応して視覚化してくれる作品をプログラムしました。幸いなことに東京の都心部に会場を見つけることができたのですが、別の友達の旦那さんが「No No Yes」っていうファッションレーベルを運営していて、わざわざ千駄ヶ谷にある工房の地下を貸してくれたのです。
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