ベンジャミン・アームストロング「ホールディング・ア・スレッド」
THINGSText: Jovan Velkoski
「ベンジャミン・アームストロング:ホールディング・ア・スレッド」は、アートやデザインなどを専門とするメルボルンの出版社、エンブレム・ブックスが初めてリリースした本だ。1975年生まれ、メルボルン在住のベンジャミン・アームストロングは、1996年にオーストラリアのヴィクトリア・カレッジ・オブ・アーツを卒業。本には、そんな彼の過去10年間におよび手がけた作品の数々を収録している。
ハードカバーの手頃で読みやすい大きさのこの本には、ベンジャミンによるドローイングや立体作品を多数掲載され、メルボルンを拠点に活躍するキュレイター、アートディレクター、ライターでもあるジュリアナ・エンバーグによるエッセイや、オーストラリアン・センター・フォー・コンテンポラリーアートのアソシエート・キュレーターのシャルロット・デイとの会話が、より作品との距離を縮めてくれる。
エンバーグによる巻頭エッセイには、作品に対するベンジャミンの考えや制作プロセスなどの解説が語られている。作品で何を表現しようとしているのかを、作品それ自体が説明するというよりは、見る人の見方や考え方によるところが大きいとエンバーグは言う。示唆に富む作品をどう解釈するか。それに対する理解は、見る人によりけりだ。
140以上のページには、過去10年の間にベンジャミンが手がけてきた作品をフルカラーで紹介。インクドローイングの作品の紹介から始まり、ごく最近手がけたものも含む立体作品を紹介する他、最後に印刷作品もいくつか掲載していて、作品からは前途したようにエンバーグがエッセイで書いているのと同じ考えを汲み取ることができる。
僕の目に留まった作品のひとつ「アップライジング」(写真上の右側)では、他の多数あるドローイング作品とは異なり、沢山の黒インクを使用している数少ないドローイング作品だ。風景画のようにも見えるドローイングの強いコントラストに引き寄せられた作品。
「ダスト・トゥー・ゴールド」(写真上)は、巻頭エッセイで語られている、心をかき乱すような考えを思い起こさせる作品だ。一見すると、そういう思いは感じないが、ひとつずつのピースで見たとき、クローズアップして見ると、何か心に動揺を感じるのだ。
本の最後には、ベンジャミンとシャルロット・デイによるインタビュー形式の会話が記録されている。この会話では、ベンジャミンの文学による影響があったことや、西洋以外で芸術や文化がどうとらえられているかに対する彼の思いなどが展開され、作品群を見た後に作家の考えを読むことができるというのが嬉しい。
本著は、アジア、ヨーロッパ、北アメリカではアイディア・ブックスより、オーストラリアとニュージーランドではモダン・ジャーナルより発売される。
Benjamin Armstrong: Holding A Thread
リリース:2010年
著者:Juliana Engberg, Benjamin Armstrong, Charlotte Day
出版社:Emblem Books
仕様:ハードカバー、155×220 mm、140ページ
ISBN:9780980701821
価格:44 $ AUS
https://emblembooks.com
Text: Jovan Velkoski
Translation: Mariko Takei