チャプター 1
THINGSText: Nils Kasiske
「チャプター 1」は、ハンブルグに拠点を置く出版社「Gudberg」と「Colortrip」との初の共同出版された本。
それを最初みた時、よくあるグラフィティ本だと思ったが、実際はそれを上回るものであった。最も破壊的なドイツのあるグラフィティアーティストの、そして彼の旅行についてのミニマルで実用的な日誌である。
『グラフィティもしくはストリートアート —何とでも呼べば良いが— は、私にとってそれはただ、様々な色、様々な場所、様々な状況であって、そしてそれは結果である。』とは、この本に対する彼のコメントである。彼の発言から、この本が真っすぐで端的で、明確な発言や文章のない、ミニマルなものだというのが分かる。ハンブルグ、ベルリン、ニューヨーク、サンパウロなどの都市でこれまで20年近くストリートで撮影された彼の写真作品が収録されていた。
彼は、自身の独特なスタイルを作り出した。彼の作品やキャラクターのほとんどは小規模だが、グラフィティの世界では有名である。そしてその作品には、しばし、短くて明確なスローガンを付け加えている。「私はアートスクールへは一度も通ってない」「30年の犯人」「不死の無法者」「ジョナサン・ミースより良い」など。ジョナサン・ミースは彼の故郷ハンブルグ出身の世界的有名なアーティストで、既に大きなギャラリーで活躍している。
この本の発売と共に、ハンブルグのアートギャラリー、ヴィシャス・ギャラリーで彼の作品の別の面を見せてくれる展示が行われた。水彩画、ドローイングの他、ドクロマーク等彼が最も多く描いたアイコンなど様々な作品を公開した。水彩画は都市にあるアートギャラリーのクリーンなイメージにピッタリ合うのに対し、古典グラフィティ作品はストリートにあるよりもギャラリーにあるのほうが良いかどうか、と言う質問には意見が再び分かれるであろう。一部の人々にとっては古典的なグラフィティスタイルが異物のように受け取られ、ストリートと比較すると、彼らの最大の可能性を引き出せなかったかもしれない。いずれにしても、今回の本と展示は彼の作品の集大成となっている。
Chapter 1
仕様:216ページ、オールカラー, ハードカバー、型打ちリネン
出版社:Gudberg
価格:30ユーロ
ISBN: 978-3-940558-38-1
https://www.gudberg.de
Text: Nils Kasiske
Translation: Juri Omachi