QUZILA(クジラ)展
2007年6月に原宿・明治通りにオープンした、サンシャインスタジオ・カフェの開店1周年を記念して、6月7日〜7月21日の間「QUZILA(クジラ)展」が開催。ジェフ・マクフェトリッジ、長場雄、穴薪ペインティングの異色のコラボレーションによる作品が展開されていた。
若手のアーティストの活動に欠かせない要素の一つに「ネットワークの構築」がある。社会的ネットワーク、他のアーティストとのネットワーク、そしてファンとのネットワーク。しかし、日本では、まだまだクリエイティブな人材が既存のメディアでしかその存在意義を深めることができないのが現状である。サンシャインスタジオ・カフェは、開店以来「アーティストの集うアンテナカフェ」をコンセプトに、展覧会・ライブパフォーマンス・イベントを通して、若手アーティストたちが情報交換を行い、そこからまた新しいネットワークを構築していくプラットフォームを提供している。
そんなコンセプトに共感し、ネーミング、ロゴから壁紙などのインテリアに至るまで店内のアートディレクションをオープン以来担当しているのが、ジェフ・マクフェトリッジ。1971年カナダ出身のグラフィックデザイナーで、マイク・ミルズ、ソフィア・コッポラ、STUSSY、マーク・ジェイコブスなどのクライアントワークでも知られているように、言わずと知れたロサンゼルス在住の気鋭デザイナーである。
僕が初めてジェフのデザインを見たのは、雑誌「relax」のカバーワークだった。ロゴが並ぶ背景に写る雪男らしき人物の影が描かれた表紙は、当時のアメリカンキッズのウォールペインティングを彷彿とさせた。彼は、1990年代グラフィティに代表されるストリートアート文化のフィールドで、皮肉っぽくもユーモラスに感情に訴える作風を用いて、流行とは正反対に自らのスタンダードを確立していった代表的アーティストである。ほんの少し時代の波に逆らって、自らを表現してきた彼自身(そして彼を取り囲む人間が)が持つ、「自分で作って自分で展示して…」という一種のビート的な “Do It Yourself” 精神が、サンシャインスタジオ・カフェの「アーティストのネットワーク作り」というコンセプトと共鳴し、アートディレクションを担当するまでに至ったのだろう。
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