「ファッション・ワンダーランド」

THINGSText: Asami Miyamura

香港を拠点として活動する、アート・デザイン系出版社「ヴィクショナリー」から、「Fashion Unfolding」に続いて、様々なファッションイラストレーションをコレクションした「Fashion Wonderland」が2008年2月に発売された。

Fashion Wonderland

前作の「Uncover the power of graphics in fashion」(ファッションにおけるグラフィックのパワーを発見しよう!)から、今回は「Uncover the power of illustration in fashion」(ファッションにおけるイラストレーションのパワーを発見しよう!)と、ファッションにおけるイラストレーションの魅力について着目している。

「Fashion Wonderland」では、前作に引き続き参加しているアーティストを含めた、72組のアーティストをコントリビューターとして迎えている。魅力的なイラストの印刷された布地の表紙から始まり、全256ページある本作では、チョコレート、オレンジ、パール、バイオレットの4つのイメージのタイプに分けて、作品が紹介されている。
今回は72組のアーティストの中から、数名のアーティストの作品を紹介したい。

Fashion Wonderland

ティム・バグショーは、リアリズムな描写が魅力のアーティスト。一見写真を加工したのかと思ってしまうほどのイラストレーションだが、作業は、しっかりとしたスケッチから始められている。彩度を落とした色彩でリアルに描写された女性の姿は、色気と美しさを感じられる作品となっている。

Fashion Wonderland

エナは、日本で活動している女性のイラストレーター。日本ではCDジャケットや、銀行のカードなどで目にしている人が多いだろう。作品はシンプルな光の白と影の黒によるモノトーンでまとまっており、目や唇、体のラインなどの、女性の魅力的な部分の繊細な表情や、きれいな曲線により、艶やかに表現されている 。

Fashion Wonderland

前作に引き続き参加しているトビー・ニーランの作品は、エネルギッシュな女性と、生活感を感じられる空間が描かれている。彼の創りだす空間には、雑に放り投げられている衣服や、解けた靴ひもなどが画面中に描かれており、上品さより活発的で日常的な女性の姿がある。その魅力的な作品は、世界的なブランド、イッセイ・ミヤケでも活躍している。

Fashion Wonderland

エリザベス・アーキポフは、シフトでも取り上げたことがあるローラン・フェティスと共同作品集を出しているアーティスト。コラージュによる少し抽象的で美しい独特の表現が魅力だ。その独特の表現によるのコラージュは日本でも評価されており、日本でも展覧会が開催された、注目されているアーティストだ。

沢山の作品の中から数点のイラストレーションを紹介したが、改めて、私たちが日常の中で接していたファッションイラストレーションの力というものを感じることができたかと思う。本作で紹介されているアーティストは、有名なファッションブランドで活躍しているアーティストも多く、その作品は4つのタイプに分けられているため、見応えは充分にあり、幅広く楽しむことができる一冊だ。

Fashion Wonderland
仕様:28.4 x 21.1 x 2.8 cm、224ページ
出版社:Victionary
言語:英語
発売日:2008年2月
ISBN-10:9889822962
https://www.victionary.com

Text: Asami Miyamura

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