「外泊するサイケ」展
香港の旧市街に佇むショップとギャラリーを兼ねるお店、カポック。そこでオーナーのアルノー・カステルと話していると、バックパック、ポートフォリオと寝袋を抱えた興奮状態の20代の青年がどかどか入ってきて、床に持ち物を放り投げた。彼は壁にかかっている絵、手作りのジンやミニチュアの城をしばし眺めたのち、『こういった雰囲気がどんなに恋しかったか!』と言った。
フロリダ出身で上海在住の若いアーティストが、天后(ティンハウ)の車庫を改造した店に入ってアットホームにくつろげるってどういうことなんだ?それは、カポックでの初めての展示「外泊するサイケ」の作品のせいだろう。
この展示は、サマンサ・カルプとエイドリアン・ウォンによって企画され、「DIY」「ファンタジー」「おたく」などにどっぷりつかっているアメリカのアーティスト5人による作品を紹介している。ポストヒッピー、ポストパンク、ポストニューエイジ、ポストポップ、この展示会にあるような作品、ジン(ミニコミ誌)、手作りプリントのTシャツ、CD、そしてグラフィックがこのジェネレーションの象徴だ。
『彼らはね、方眼紙に描くんだ。』と、アルノーが言う。『僕たちもよく方眼紙に書いたなぁ。』絵の複雑さが彼ら独特の世界を創り上げ、子供っぽい外見からは想像できないほどその世界はしっかり形成されている。こういった世界は誰にでも心当たりがあると思う。それは一般的な潜在意識の変形であり、普段の生活の中で大量に押し寄せてくるイメージと心の中の世界を表現したものである。
もし来世のアメリカ郊外で熱狂的な愛が受け入れられ、並外れて解読不能でかつ親しみやすい新しい美学的思想が生み出されたらどうなるんだろう。そんなところにポップカルチャー、ビデオゲーム、60年代と80年代のイコノグラフィ、神話的な動物のイメージがはこびったら…。
答えは、この世のものとは思えないトーマス・ギャロウェーのロボットフィギュアシリーズ。そしてドン・ヘンリーやエア・サプライを聴きながら石器を削っているマット・ロック作のネオン色ケイブマン。デボン・バーメガによる、幾何学の問題用紙に漂うアステカ調な怪獣の街。
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