アンリ・サラ展「ロング・ソロウ」
ベルリンをベースに活動するアルバニア人アーティスト、アンリ・サラ(ティラナ出身、1974年生まれ)。1999年、2001年、2003年と連続3回に渡るヴェネツィア・ビエンナーレへの出展を経て、イタリアにおける初個展「ロング・ソロウ」が、ニコラ・トラサルディ財団の主催で開催されている。
Anri Sala, Uomo Duomo (still), 2000
2度目のヴェネツィア・ビエンナーレで彼は、本展でも公開されている作品「Uomo Duomo」(2001)でヤング・アーティスト賞を受賞した。ミラノの大聖堂で眠りかけた老人が、無意識的な神経反射によって繰り返し頭を上げたり下げたりしているというもの。「タイム・アフター・タイム」(2003)の中の、馬のような非現実的で不思議なキャラクターの動物は、ティラナの夜のストリートの端にじっと立っており、時々車が通過する時にのみ明確に見える。
Anri Sala, Long Sorrow, 2005
本展のタイトルにもなっている13分間の新作ビデオ「ロング・ソロウ」(2005)は、アメリカのフリージャズ・サックス奏者ジャミール・ムーンドックの長いソロパフォーマンスを映し出す。この、明らかにベルリン周辺の建物の空虚に浮かんでいるようなミュージシャンは、取り囲む庭や邸宅などと共に、美しくてシンプルなビジュアルの構図の要だ。音楽がより力強くなると、焦点はムーンドッックの顔に移る。慣習的なライブミュージックを模倣し、感情や特徴、パフォーマンスの激しさを強調し、デリケートで形式的な様子をクローズアップすることで明らかにする。音楽がより力強くなると、焦点はムーンドックの顔へと移る。
Anri Sala, Ghostgames (still), 2002
また本展には、「ゴーストゲームス」(2002)という、ノース・カロライナの夜のビーチで子供たちが懐中電灯を片手に蟹を追い掛けるゲームや、「スリー・ミニッツ」(2004)という、ドラムキットのシンバルがスポットの光を反射してストロボ効果や様々な画像を作り出す作品も観ることができる。
アンリ・サラの作品は、社会規制や孤立、放棄などの政治的な寓話を瞬間的にもたらし、それでいて反復の使用や、静寂、未解決の物語りは、どんな文学書をも麻痺させるほどだ。厳しい光と深い闇のコンビネーションを伴うアンリ・サラのビデオは、見る者に夢のような経験をさせる、感覚的で形式的な成功作である。
Anri Sala, Long Sorrow
会期:2005年12月15日(木)〜18日(日)
会場:Circolo Filologico Milanese
住所:10 Via Clerici, Milan
TEL:+39 (0)2 8646 2689
https://filologico.it
Text: Francesco Tenaglia
Translation: Yurie Hatano
Photos: Courtesy of Fondazione Nicola Trussardi © Anri Sala