ヨシ・ソデオカ

PEOPLEText: Naoko Fukushi

今年5月にはバルセロナで開催されたOFFFで、パフォーマンスを行っていますが、イベントの感想は?

とても素晴らしい経験でした。OFFFは、回を重ねるごとに実験的音楽要素が濃くなってきているし、同時にかっこよくなってきていると思います。OFFFの開催目的は、アート、デザインそして音楽を統合するものと僕は捉えています。だからこそ、アーティスト、デザイナー、ミュージシャンが一緒になって混ざり、プレゼンテーションやパフォーマンスを行うのだと思いますよ。

僕達はそこで、オリジナルのシステムである、カスケットを使って、エクスペリメンタルな音と映像のパフォーマンスをする予定でした。このシステムは、僕と、パートナーのシェーンとで構築した、リアルタイムでシンセティックノイズオーディオと、ビデオプロジェクションをミックスできるものです。

睡眠不足と、時差ボケとともに、バルセロナに到着したのですが、準備をしている時に機材のトラブルが起こりました。システムの半分が、ヨーロッパの200ボルト電源にやられて、煙りと共にだめになってしまったのです。そのことに備えて準備しなかった、僕の責任なんですけど…。とにかく、映像のシステム部分を動かすことができなくなり、ライブでノイズミュージックを作り上げるということに焦点を当て、全てを即興でやらなくてはいけなくなりました。結果、多くの観客を混乱させることになってしまいました。いつもの、C404のビジュアルワークのプレゼンテーションを期待していた人もいたと思いますが、それはやりませんでした。予想もつかないことをやるのが好きなのです。そして確実に僕達は、OFFFで一番騒がしかったと思います。どんなイベントでも、このような変わり者が必要です。つまり僕がここで言いたいのは、全てが素晴らしかったということ。とりわけ僕は、OFFFをものすごく楽しみましたし、OFFFで会った人全てが本当にすばらしくて、バルセロナはとても美しい街でした。また来年行きたいですね。

11月に開催される、DOTMOVフェスティバルのオープニングパーティでのパフォーマンスは、どのような内容になる予定ですか?

オープニングパーティーでは、30分から1時間くらいのパフォーマンスを行う予定です。今回は、システムがだめにならないことを祈っています。激しい感じのものではなく、優しく、アンビエントな感じになる予定です。カスケットのシステムは、説明のページを見るととても複雑に感じますが、実際にプレイするところを見ていただければ、シンプルなものだと分かっていただけるでしょう。とても精密な、シンクロする音と映像のパフォーマンスシステムです。オーディオ楽器の部分は、パートナーのシェーンがスーパーコライダーで書きました。彼が主に、これをパワーブックとタブレットを使ってプレイし、僕もパワーブックで音を同時にプレイする、といった具合です。そして、僕達双方のオーディオパフォーマンスが、ヴィジュアルの流れをコントロールします。ほとんどは、実験的なノイズバンド・ノッブスの楽曲をプレイする予定です。

OFFFのためにつくられた「REMIX」という作品をウェブサイトで拝見したのですが、音楽と映像がシンクロしていて、二つの要素によってできている作品なのだという印象を強く受けました。どのようなプロセスで制作するのですか?

2つがとても結びついて見えるのは、音とビジュアルを同時に作っているからです。僕が実験的なビデオを作っている時、心の中では映像と音が同時に浮かんでいます。それをビデオで表現していく、という感じです。「C404.40.40.31 DVD」という作品があるのですが、この30分の作品は、まさにそのような感じに仕上がっています。僕自身、こういった作品を何と呼んでいいかわからないですし、どういうカテゴリーに入れていいのかもわかりません。おそらく、エクスペリメンタルビデオと呼ぶのがよいと思うのですが、それでも、それがいったい何なのか、ということを説明するのには時間がかかりそうです。サイケデリックオーディオビジュアルトランスと、言うべきでしょうか。また、コンペティションやフィルムフェスティバルなどに応募しようとするときも、どのカテゴリーにすべきか大変悩みます。大抵、僕の作品に合うカテゴリーはないんですよね。映画でもないし、ミュージックビデオでもないし、そして音はエレクトロミュージックでもないし。ただそこにあるそのものが、僕の作品なのです。

作品制作では、どのようなものからインスピレーションを受ける事が多いですか?

そのプロジェクト次第ですね。でも僕自身のアートプロジェクトの場合、いつもコンセプトや意味を理解するところから始め、それに合うものを探します。メディアカルチャー、テクノロジー、人文科学間の関係や、またそれらがどのようにお互い影響し合っているかということにインスピレーションを受けます。例えば、古いテレビや映画の場面を沢山使って、僕が作ったノイズと一緒にコラージュしたりします。アナログの技術がとても好きで、デジタルの技術を使ってそれを再現させようとしたりもします。ときどき僕がやるのは、デジタルビデオをVHSのアナログテープに落として、画質を下げてみる。そしてその場面をまたコンピューターに戻して、アナログっぽい画像にする、という試みです。そこから得られる、ザラザラした感じが好きです。

今回手掛けていただいたカバーデザインのコンセプトは?

僕が想像したことは…、もしも、アンダーグランドに放映されている、シフトというテクノロジーテレビ番組が80年代初期にあって、僕がそれを両親のビデオテープの教育番組に重ねて録画する。僕がそのビデオテープを今見つけて、それがどんなふうに見えるか。実際、80年代の日本のテレビ番組をランダムに録画していたのですが、今見るとかなりクレイジーですね。

ニューヨークを拠点にされていますが、ニューヨークのウェブ、デザイン、アートシーンについてどのように考えていますか?面白い動きはありますか?

長く居るので、いつも当然のこととして見てしまいますが、ここには常に、面白いものがあると思います。でも、僕には、ニューヨークのウェブやアートシーンについて語る資格は、ないと思います。僕はトレンドを無視するようにしていますし、最近はイベントをチェックして出かけたり、人と交わるのは、かなり稀なことで、自宅や仕事場のどちらかにいて、いつも働いています。ロ−ワ−イーストサイドに住んでいるのですが、ニューヨークで今起こっていることに関しては、僕は傍観者の一人に過ぎません。インターネットは、コミュニティーをグローバルなものにし、もはやどこにいようがそれは大した問題ではない。日本にいる人の方がここで起こっていることをもっと知っているかもしれません。それでもニューヨークにいる方がいいことがあります。文化的に、常に沢山の人が本当にクリエイティブなことをやっていて、その人達に会うことができる。とりわけ、ここがニューヨークだからというのがあります。何か新しいもの、アンダーグラウンドなものが、ここでは生まれている。だから面白いのです。

今後の予定、ビジョンを教えてください。

人生の計画を立てるのは、あまり得意ではありません。流れと共に行くのが好きです。言いたいことがあまりよく伝わらないかもしれませんが、より良くあるために、やっていきたいこと、挑戦したいことをやり続けたいと思っています。

読者へメッセージをお願いします。

札幌でのDOTMOVフェスティバルで、読者のみなさんに会うことができれば、と思っています。このようなイベントはそんなに多くないので、そこで会えるのを楽しみにしています。

C404
住所:515 Greenwich St. 203, New York, NY 10013
info@c404.com
https://www.c404.com

Text: Naoko Fukushi

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