サンパウロのグラフィティアート

PLACEText: Greice Costa


Pichacao’

アメリカ人グラフィテイ・アーティストのソニックは、今までに3度、このサンパウロに来た経験がある人物。今でも、初めてピチャカオを見た時の印象は鮮明に残っているという。『はじめてサンパウロを訪れた時に、空港からカンブーキ(サンパウロ市の南部地域。グラフィティが盛んな地域である他、オス・ジェメオスが多くの作品を制作した場所でもある)へ向かう道中、窓越しに見えた作品の数々に思わず目が奪われました。その頃にはもう、ベルリンの壁に描かれていたグラフィティの力強さというものを忘れてしまっていた時だったので、それをサンパウロで見つけた!と興奮しました。それ以来、僕の人生はすっかり変わってしまいました』。ソニックにとっては、ここでのグラフィティの達人や街自体が特別な存在だと言う。それは、彼らが持つ幅広いスタイルや技術、スプレー、キャップ、ロール、ブラシのミックスが独特だからである。


Os Gemeos

若手アーティストのフリップは、サンパウロでこれほどまでにグラフィティ文化が発展したのは、使われている言葉自体がヒップホップの独特な世界から懸け離れたものだからではないかと語る。『線も描き方も全て自由。この傾向が、他のどこの地域よりもサンパウロが一番強いのではないかと思います。昔からある方法で描く人もいるし、デザインやその他いろいろなものを取込みながら新しい方法を開拓する人もいます』。


Flip

街に根付く文化のミックスが、壁へのグラフィティとなって現れる街、サンパウロ。日本、イタリア、ドイツ、ポルトガル、アフリカなど、海外からの文化も溢れた「文化の坩堝」がこのサンパウロなのである。もしここの壁に口があったならら、きっとレゲエやラップ、ロックやドラム、バス、それに昔から伝わる歌などが聴こえてくるだろう。一度是非、耳を傾けてみてほしい。

Text: Greice Costa
Translation: Sachiko Kurashina

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