ABAKE(アバケ)

PEOPLEText: Ayako Terashima

ワッペンのデザインもされたそうですね?

カイサ:これも今回の展覧会のために制作した商品のひとつです。ワッペンの部分のデザインには、私達の父のイラストがあしらわれています。

マキ:ワッペンをメディアのひとつとして考えた時、まずはじめに僕達の頭の中に浮かんだのが、ラコステのロゴでした。あのワニのロゴは、今ではものすごいパワーを持っていますよね。でも僕達は、ラコステのように世界中で認知されている強さとは反対のもの、だけどかなり個人的なものを作ってみたかった。これが父を題材として選んだ理由です。お母さんにしようか、ちょっと悩みましたけどね…。

ベンジャミン:このデザインでは、まずメンバーそれぞれのお父さんの写真を集めることからはじめました。それを北イングランドにいる職人さんに送ったのですが、戻ってきたらこのようなデザインになっていました。それからは特に僕達はこのデザインに手を加えませんでした。そうすることで、その職人さんと良い交換が成立すると考えたからです。良いコラボレーションができたと思っています。

マキ:展覧会についての基本的なアイディアに話を戻したいのですが、今までいろいろな美術館やギャラリーで展覧会を開かせていただきましたが、いつもグラフィックデザインやその他のデザインをそういった空間で展示するのに、かなり違和感を感じていました。それは、コンテキストが力強いからです。例えば、CDジャケットのデザインを見たければ、レコード屋に行くのが一番。それがジャケットを見るためのベストな方法です。どのように作品を紹介するか、どこで自分達が満足するかがポイントになるわけです。今回僕達は、いつも使っている冷蔵庫を題材として利用しました。ステッカーを冷蔵庫に貼ったりする人って、よくいますよね。でも今回は、ちょっと見方を変えてみて、食べ物が入ったままの冷蔵庫を起用しました。裏側にはマグネットもついています。冷蔵庫が何個かあって、その後ろには何かがついている、というものです。そのおまけを見るためには、冷蔵庫を部屋の真ん中に置かなければいけないかもしれませんね。もちろんこの冷蔵庫は新しいので、普通の冷蔵庫として使うこともできます。

キツネ名義では、ファッションユニットとしての活動も平行されていますね。

キツネは、マサヤ・クロキ、ギルダス・ロアーク、それに僕達アバケによるユニットです。2001年から始動しています。各々が様々な分野の知識をもっているので、ファッションだけではなく、音楽やイベントなどでも活動することが可能です。

今回制作していただいた、カバーデザインについて教えて下さい。

佐々木貞子さんという女性がいるのですが、彼女は広島に原爆が落ちた際の被爆者で、鶴を千羽折ったら病気が治るということを信じて鶴を折っていましたが、完成させることができないままに亡くなってしまいました。今回のこのカバーでザインでは、その千羽鶴の現代版を作ってみようと思いました。右下にカウンターがあるのですが、1000人がサイトを訪れる毎に、僕達の平和への想いが本物になるのではないかと思います。

今後の予定について教えて下さい。

マルチノ・ギャンパーという家具デザイナーの方がいるのですが、その方の本の出版の仕事が入っています。イギリスのテレビ局、チャンネル4とのプロジェクトもあり、これは、これからのアーティストにチャンスを与えるのが目的です。マルタン・マルジェラと行った、ライン6のビジュアル表現はこれからも続けていきたいですね。今回展覧会を開催するにあたり、こうやって来日し、素晴らしい人たちとの出合いに恵まれました。まだまだいろいろなものが見足りなかったので、また近い内に日本に来たいです。

最後に、シフトの読者に向けてメッセージをお願いします。

これまで私達は、ヨーロッパにあるいくつかの大学でワークショップを開いてきました。将来は、日本でも同様の活動ができればいいと思っています。興味がある方は、是非ともアバケまで御一報ください。

Abake
a.b.a.k.e@free.fr

Text: Ayako Terashima
Translation: Sachiko Kurashina

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