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ラード・バーマン展「テイキング・タイム(アウト)」

HAPPENINGText: Bastiaan Rijkers

広場、古い町の急な階段や小さな通り、サッカー場や市場などは、彼のどの作品にも見られる日常的な風景だ。そのままの状態を撮影する本当の意味のドキュメンタリーフォトグラファーとして彼は、コントラストの多い場所をロケーションとして探し求めている。


Portugal, 2000

例えば鋭い直線的なラインがある場所や、うねりがあるビル、小さくて落ち着きがある広場や開放感がある大きな空間がそれで、そのような場所が持つある一定の奥深さやダイナミックなエッジが彼の写真の中では利かされており、公共の場所としての「良い」写真、というイメージを最初に与えるのだ。しかし次には、今見えていたものよりもリアリティが少し欠けた状態の世界がそこには広がる。


Viale America, Rome, Italy, 2002

同じ場所から得ることができる多種多様なイメージを重ねることで、リアリティを楽しむのが彼のやり方だ。その時やそこにいた人々の観念を楽しんでいると言ってもいいだろう。彼の作品をジッと見ていると、そこに何かしら「エラー」があることに気付くだろう。人と人の間の距離やその人たちが向かっている方向の狭間にある相互関係を見ることで、その「エラー」を全面に出しているのだ。そしてそのようなエラーは、時によっては、気付かないうちにストレートに表現されている。イメージのリアリティーは、人と、そして彼らが公共の場所で互いに影響し合うという行動の狭間にある日常の行為に挑戦しているのだ。その時々の要素は、時に同じ人が何度も写真に表れたりするように、何の関連性もないものに思われるのだ。


Lago di Bracciano, Italy, 2002

彼の作品では、微妙とも言えるリアリティが、どのように扱われているかを見ることができる。彼のイメージしたものは、私達の日々の生活の中に実存するものとして現れるのだ。そしてそこからは、私達がどれほど物事に振り回されているか、イメージがどれだけ相対的なものになれるか、実際には存在していなかったり、あるいは実際とは本質的にかけ離れているものに、私達がどれ程安易に信じこまされているかが感じられる。リアリティの認識の仕方を再考してほしい、というのが彼の望みであり、そして全ての物事の根源は、そのリアリティそのものなのである。「現実の」世界を注意深く見つめてみると、それは第一印象として感じとっていたものとはちがうんだ、ということに気付くだろう。

既に次の作品の制作に取り掛かっているバーマン。その作品は更に、問題視される部分やロケーションに関しては一貫性のあるものになる予定だ。また最近では、大規模なイベントや、コンサート、催し物、トレードショーで見られるようなグループ間の相互関係を研究も行っている。このような具体的な状況の他にも、行く先々でその土地や人を撮り続けているのだ。彼が住む世界の中では、終わりのない新しい発見を期待できるのである。

Lard Buurman – Taking Time (Out)
会期:2002年1月7日〜10月20日
時間:10:00〜17:00 
会場:Fries Museum
住所:Turfmarkt 11, Leeuwarden, The Netherlands
TEL:+31 (0)58 255 55 00
https://www.friesmuseum.nl

Text: Bastiaan Rijkers
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Courtesy of Fries Museum © Lard Buurman

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