ジャン=マルク・バール「フリー・トリロジー」
「グラン・ブルー」(1988)の海へ帰っていく男として知られる、ジャン=マルク・バール、この度は監督としてニ本の映画を携え、制作パートナーのパスカル・アーノルドとともにハリウッドへやってきた。ドグマ映画#5「ラバーズ」(1999)とその続編であり、「フリー・トリロジー(三部作)」のニ作目でもある「トゥーマッチ・フレッシュ」(2000)。驚くことに日本とヨーロッパでは既に公開されているこの映画達、ロスでは初上映となった。ハリウッドという商業映画製造マシーンのお膝元では、なかなか灯台もと暗し的な現象が起きていることに気づく。
フランス人の母とアメリカ人の父を持つバールはドイツに生まれアメリカで育った後、イギリスを経て、もう片方の血に呼ばれるまま現在はフランスに在住する。もともとアメリカの若者をターゲットとしたマーケティング、利益主義と距離を置くためにヨーロッパに渡った彼。多様なアイデンティティーを盾に自ら「ヨーロピアン・フイルムメーカー」を名乗るバール。今回はDVで製作した低予算フイルム二本の配給元を求めての世界遠征ツア−の始まりだと言う。(日本には4月来日予定)二作品とも原作、脚本、監督、撮影、編集そして宣伝行脚の旅にいたるまで真摯な映画制作の姿勢がにじみ出ている。
会場となったエジプシャン・シアターは、こういったオーディエンスとフイルム・メーカーの真の交流の場の提供を得意とするアメリカン・シネマテックのホームシアターである。1981年に動画の真の芸術性をたたえる目的で結成されたこの団体。世界中地域をとわない優良フイルムからハリウッド映画にいたるまで、多くの場合監督、プロデューサー、俳優たちを呼んでのちょっと特別な夜となる。AFIを含め、昨年はレスフェスト(デジタルフイルム・フェスティバル)などの新米フイルムフェスティバルなども迎えエジプシャンは知る人ぞ知るスポットとなっている。
“Lovers” (1999)
アメリカを後にした大きな理由でもある制作の自由を追求したのがこの三部作「フリー・トリロジー」。一部作「ラバーズ」はドグマ作品として認定されている。「EUROPA」(1991)や「BREAKING THE WAVES」(1996)での俳優としての抜擢を超えての良き友人であるラース・ボン・トリェー監督を中心として提唱されたドグマ95の認定ルールを簡単に述べると以下のようである。
1. ロケーションに忠実に撮ること。セットや小道具は不可。
どうしても必要なモノがある場合は、それが見つかる場に出向いて撮ること。
2. 音響は生取り以外の方法では認められない。
3. カメラは三脚などに固定せずに手で持つこと。
4. フイルムはカラーのみ。
5. フィルターなどの特殊効果は使用しない。
6. 殺人などの浅薄な行為は含んではならない
7. 「今、ここ」に忠実な映画づくりを。時空的、地理的移動は認めない。
8. 「ジャンル映画」は不可。
9. 35mmで撮ること。
10. 監督のクレジットは入れない。
© DOGME 95
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