ミリア 2001
HAPPENINGText: Tomohiro Okada
絵空事ではない、何もしなくても、何も考えなくてもブロードバンドはやって来た。そして、同じようにより一層、何も考えなくても自然とブロードバンドはやって来るのだ。やって来たことを気づいたとき、もはやそこには規格化されたサービスと表現が満載され、何かをその上でしたくても表現の空席はプラチナチケットと化してしまうことになるだろう。まだまだと二の足を踏んでいる場合ではない、そして、「まだ早いよ」というもはや指定席を手にしているビッグブラザーたちの声に萎えている場合でもない、早くブロードバンドという「ブロードウェイ」を闊歩し、スポットライトを狙おう。
カンヌ、フランス。カモメ飛び交い、シャンパンと生牡蠣のカクテルパーティーが繰り広げられるこの街で、静かなる席取り合戦が毎年2月、繰り広げられている。ミリア。昔はCD-ROMなどのPC用のコンテンツの版権を交し合うマーケットであった。もちろん、そんな時代は終わり、ミリアそのものも必要ないのではと思われてきた。しかし、ブロードバンドという誰もが個人的に巨大なデータ受信・転送を行えるようになった時代、ブロードバンド上を闊歩できる表現やコンテンツを探し、また、ブロードバンドの歩き方を決めるインターフェイスのシェアを得るためのデモンストレーション・サーカスへと変貌を遂げたのだ。では、席取り合戦の模様を眺めてみよう。
「まだまだ」この言葉がよく似合うのが今回のミリアであった。もっと他にあるに違いない、もっと極めることができるに違いない。こんな感覚が、インフラストラクチャーを提供してゆく通信系の企業にも、そして、コンテンツを提供したり、また、それをのせるためのプラットフォームを提供する企業やクリエーターたちからみなぎっていたのだ。
インタラクティブなデジタルテレビ放送、ブロードバンド・インターネット、WAPやi -modeといった携帯電話の表現力の向上、そして次に来る次世代携帯電話、今まで最先端のテクノロジーとして特別な存在でしかなかったものが、本当の民生向けサービスとして一気にヨーロッパ中に押し寄せてくることが決定付けられている中にあって、実現したその時にむけて「まだまだ」が続けられているのだ。「まだまだ」その感覚は、自分たちのビジネスプランやコンテンツ展開の手の内を見せ、その反応を探りあい、パートナーを探しあうかたちにそれは反映させていた。
スペインを拠点に巨大なスペイン語・ポルトガル語圏を市場として、インターネットと携帯電話サービスを提供しているテラ・グループの携帯電話部門・テラモバイル(スペイン)のCEOでであるエリセオ・サンチェは、ミリア内で開かれたシンクタンク・サミットの中で、テラモバイルが考えている次世代携帯電話に向けたデータ伝送量に対応したサービス展開案を提示しながら、これらを実現してくれるコンテンツやサービスのパートナーを求めていることを率直に語った。テラが想定するデータ伝送量に対応して提供できるサービスは、現行の携帯電話から対応できるものとしてテキストベースの情報提供サービスとし、次世代携帯電話へと向かう過渡期の高容量データ転送に対応したものとしてバンキングや既存のWWWの閲覧やゲームなどのデータ取り込みベースでのエンタテインメントと目して、現在、必要としているのはここの部分をサービスとして提供してくれる存在だというのである。そして、来年以降より始める予定の次世代携帯電話において動画の配信や本当にリアルタイムなテレビ電話を実現してゆきたい(というよりもそれより他にアイディアが無いので何か欲しいという意図)というのである。
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