東京アートブックフェア 2019

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

TABF 2019 – アジア、アメリカ、ヨーロッパが出会うフェア

ここで参加者の声を集めながら、もう少し今年を振り返ってみたい。出展者からの反響を聞くと、ロンドンを拠点とするアーティスト、ヴァレリー・フィリップスは「Almost a miracle!」(ほとんど奇跡)という言葉を残していったという。世界各地のブックフェアに出展経験がある彼女は、細やかなケアがゆき届き、滞りなくフェアが進行していたことを「ミラクル」と表現したそうだ。手作りでこれほど大きなイベントを作り上げたということは、まさに奇跡だと思う。第1回から来続けている来場者からは『本当に東京アートブックフェアになりましたね』という感想も寄せられた。


Guest Country Exhibition 1 “Radical Pages: A Selection of American Zines”, TABF 2019, Photo: Hajime Kato
ニューヨークのアートシーンを牽引する写真家、レレ・サヴェリが主宰し、インディペンデント出版のプラットフォームとして機能する非営利のメディアコレクティブ「エイト・ボール・コミュニティ」。本展では特設ブースを設置し、所属作家がお勧めするジンを展示・販売した。ブースを手がけたのは、空間デザイナーの西尾健史。

また、今回の「ゲスト・カントリー」ではインディペンデント出版文化を牽引するアメリカに焦点を当てた。10回目の節目となる年に、満を期して実現した企画といえるかもしれない。


Photo: Hajime Kato
濱中敦史氏の発案でスタートした、新しい才能の発掘支援を目的としたアワード企画「TABFタレントアワード」。エイト・ボール・コミュニティのレレ・サヴェリ(中央)は、「ザ・モール」と「BANG!!(Be A Nasty Grrrl!!)」を選出。


Photo: Hajime Kato
デイヴィッド・シニア(左)が選出したのは、ソウルを拠点に映画のポスターの制作をしているデザインスタジオ「プロパガンダ・シネマ・グラフィックス」(右)。各受賞者に手渡された6つのトロフィーは、アーティストの長谷川有里によるもの。

東:今年アメリカから招聘したデイヴィッド・シニア(サンフランシスコ近代美術館図書館及びアーカイブ責任者)やエイト・ボール・コミュニティザ・シング・クォータリーというのは、初期の頃からインスパイアされ続けてきた存在です。特にTABFがジンズメイトとしてNYABFに出展していた頃に、体験として得たものは大きかったです。私自身、ブックフェアから与えられたものが沢山あって、恩返しをするような気持ちでこの活動を続けてきたので、今年彼らを呼ぶことができたのは本当に嬉しいことでした。また、彼らのことを追い続ける一方で、今アジアから生まれつつある新しい文脈にも可能性を感じています。今後は、アジアも掘り下げていきたいですね。

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