藤谷康晴個展「ドローイング一族・現代の歌舞伎者たち」

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

宙に浮かぶデジタル映像など、バーチャル・リアリティが現実空間に混在する近未来では、『虚構との対峙』が現代人の新たな課題となる。しかし、日本人は古来より「実体以外の物の存在」を認識する精神文化を持ち、浮世絵や漫画など、平面的でダイナミックな視覚表現を生み出してきた。

『虚構を幻視する事』を現代の絵師のあり方とする藤谷康晴が、江戸時代の浮世絵師・東洲斎写楽による役者絵「大首絵」へのオマージュとして『存在のリアリティ』を描く新作シリーズ「ドローイング一族・現代の歌舞伎者たち」を発表する個展が、クロスホテル札幌クラークギャラリー+SHIFTのコラボレーションで展示を行う「まちなかアート・クロス・エディション」の第25弾として、クロスホテル札幌の2階ロビーとミートラウンジにて7月5日から9月30日まで開催されている。

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「都市空間をすり抜け歩く・その動きは身体表現 EDOBAY」© 藤谷康晴, 2014年, 780 x 560 mm, 和紙に水彩顔料, クロスホテル札幌

新作シリーズ制作の動機は、藤谷が、重要文化財にも指定されている写楽の「大首絵」を画集で改めて見た時に、まるで未知の人種と出くわしたような感動、他の絵師による役者絵にはない『存在のリアリティ』を感じた事だった。同作は有名である為に、既定の概念(役者絵で、実在の人物で、当時の風俗の記録であるという前提)の中だけで解釈されてしまう事も多い。

藤谷は、現代人に「大首絵」が持つ『存在のリアリティ』を再発見してもらう事が、同作に対する解釈のアップデートに繋がり、更には、現代人が『虚構と対峙』する力になり得ると考え、自身がこれまで描き続けてきた「ドローイング」(線描)の手法を用いて、2014年から2017年にかけて新シリーズの制作に取り組んだ。

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「密告覗き見エトセトラ・張り巡らすブラックライン GOROBAY」2016年/「格子の枷はこの世の定め・然らば振り回す蛍光灯で都市を斬る IPPEI」2015年, © 藤谷康晴, 780 x 560 mm, 和紙に水彩顔料, クロスホテル札幌

ドローイングマンという別名を持つ藤谷は、元々は漫画を描いていたが、2007年頃から日本古来の八百万(やおよろず)の神々の思想(森羅万象に神が宿るという観念)をもとに、目に見えない存在・生き物・神々や魔物達をドローイングする作家活動を行い、日本及びアメリカで作品を発表してきた。彼にとってドローイングとは、『目に見えない存在との対話・戯れの軌跡を残すように、今という時空のリアリティを描線で引き寄せる行為』であるという。

ドローイングで虚構性を描き加える事により、「大首絵」が本来持つ『存在のリアリティ』の抽出を試みた新作シリーズ「ドローイング一族・現代の歌舞伎者たち」は、歌舞伎役者であるという元絵の前提を覆した「歌舞伎者(傾奇者/時代のアウトロー)」集団であり、役者とは異なる新たな人物像が与えられている。また、「大首絵」はブロマイドとして手元で見る小型の版画だが、その前提も覆し、絵画として展覧する事に適したサイズまで拡大されている。

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左から順に「鋭利な格子は黄色い叫び・反逆の GENZO」2014年/「格子越しのダンサー・のっぴきならぬエロティック JIROSAKU」2015年/「その眼差しは優しく厳しい・現代の浮世絵師 SHINOBU」2014年, © 藤谷康晴, 780 x 560 mm, 和紙に水彩顔料, クロスホテル札幌

様々な前提を崩しながらも、写楽による構図や表情、手のいびつさなどは元絵のまま残され、その上に大胆なドローイングが描き込まれている。画材は、版画用の和紙に水性顔彩(日本画用の絵の具)を使って筆で描かれているが、線描はまるで細いペンで引かれたように緻密だ。

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