パリにおけるデザインの主要ハブのひとつである「Design D’Days」の17回目が5月に開催された。今回のテーマは「ゲーム」。展覧会から様々なイベントまでを網羅し、集まった14,600人の人々を魅了した。メイン会場となったパリ装飾美術館では、15の展覧会が開催されており、来場者は素材や空間、様々なアイディアやテクノロジーを用いて作られた、美しく実用的な作品を楽しんだ。全ては、遊びと発見の精神のなかで考えられている。

20日間に渡るデザイン・フェスティバルの会期中、以前ミラノで開催され、今回パリに来た展覧会「カルテルとジョルジュ・ヌクのマオリ・アート：新しいデザインの融合」を鑑賞することができた。このプロジェクトは、サラ・キエーザの支援とカルテル・ミュージアムのキュレーターであるエリサ・ ストラチェの協力を得て、新ミラノ文化博物館の管理者であるカロリーナ・オルシーニとイオランダ・ ラッティが企画した。

Kartell, Designer’s day, George Nuku

イタリア人のエディターと、マオリのアーティストの予想外の遭遇は、マオリ文化に対して親しみのない人に対して、教育的で人目を引く発見をもたらした。25点のカルテルの家具とアクセサリーには、ジョルジュ・ヌクによって見事な模様が刻み込まれ、ロココとマオリのスタイルを融合していた。カルテルが過去に製作していた作品の再解釈を超え、アイコニックな家具の数々はジョルジュ・ヌクにとって、マオリ文化を表現するための美しいカンバスとして機能した。彼はその上で、自然の重要性やマオリの神々、先祖のために行われる儀式などに光を当てた。

貝、石、骨や木、あるいはプラスチックといった様々な素材を使うジョルジュは、「結びつきの系譜」の中で生きているという。それは彼自身と素材との結びつきであり、彼が有名になったプラスチックの素材も含んでいる。彼は、プラスチックが天然ガス、オイル、木炭、鉱物や植物といった古来から自然に存在する素材が持つ魅力を引き出す素材であることを思い起こさせてくれる。『プラスチックは僕の祖先なんだ』と彼は言う。アーティストにとって、彫刻を作ることは、素材のもつ自然の部分を明らかにすることなのだ。

『オイルに自然の要素が含まれているように、君にも自然が含まれている。君も僕も、自然を有しているんだ。僕にとっては、プラスチックも自然を含んでいて、神々しさの証明でもあると思っている。というのも、プラスチックの中に人は光と水という二つの性質をみることができるから。僕らはその二つが無いと生きられない。それらは生命の源泉で、だからそれらを含んでいるプラスチックも、神聖なものになるんだと思っている。実際のところ、全ては神聖であり、あるいは何も神聖ではないんだ。アーティストにとって、その中間は選択肢に入らないから。そもそも、この赤ん坊は好きだけどあの赤ん坊は嫌い、だなんて言えないだろう？そんなのおかしいし、命に反することだと思う』

Kartell, Designer’s day, George Nuku

光は彼の作品にとって欠かすことのできない要素であり、プラスチックはその意味で理想的な素材だ。『プラスチックは透明だったり半透明だったりして、それを通してお互いを違った風に見ることができるだろう。僕らはジョージ・クルーニーみたいな地上の星みたいに、地球にちりばめられている。僕らはこの光でできていて、誰もそこから逃げる事なんてできないんだよ』そういって彼は現実的な結論を続けた。

プラスチックの持つ環境汚染的な側面のため、彼の環境に対する興味関心と矛盾すると考えられることもあるが、そのことについて彼は明白な答えを出してくれた。『環境汚染の原因は、プラスチックじゃなくて僕らだ』と。さらに彼は、『環境汚染は神聖だ。僕らがいま環境汚染を見る時、僕らはそれを見る方法すら分かっていない。僕はプラスチックの素材を使って、一つの美しい作品に仕上げていくんだ。美しいものの前に立った時、僕らはそこから目を離すことができないから。一番ぞっとするようなものから、一番に美しいものを創り出しているんだ。アイコニックな作品は僕たちが価値を見出さないものから作られている。環境汚染はプラスチックではなくて、僕たち人間が引き起こしているんだ』プラスチックの環境汚染問題について問題提起することは、既存の価値観に対抗することでもあると彼は言う。