『僕たちが海にプラスチックボトルを捨てないようにするにはどうしたらいいんだろう？このプラスチックボトルには、10,000ユーロのコストがかかっているんだ。僕たちの価値観は“お金”の優位性がとても高いから』

Kartell, Designer’s day, George Nuku

ジョルジュによると、マオリのアーティストは、他の価値観をお金と同じくらい、またはそれ以上に大切にしているのだという。その価値観の内のひとつは、フィーリング／感じることだ。『人々は感じる事を忘れない。そしてその感覚を創り出すために、人々は“普通”の中にいささかの“余計なもの”を加えて、“特別なこと”を生み出していく。なぜなら僕たちの日常は特別だから。もし、全ての特別な瞬間を集めたら、僕たちは素晴らしい人生を得ることができると思う。そして全ての恐怖や嘘は、そこから消え去ってしまうんだ』

彼の作品の中心にある心の栄養は、「素材との上質な時間を持つことだ」と彼は言う。それは全てデザインと、「繰り返しの自己分析」への道を作り続けることなのだ。『僕は素材とダンスするんだ。素材と向き合うことで、僕はその時の僕に必要ない物が取り去られていくのを感じる。僕は素材が歌って踊るような瞬間を望んでいるんだ。僕らの祖先たちはあまり期待はしていないし、彼らは平凡な瞬間を観たいとは思っていないとも思うよ』

『明日どんなことを想像するか分からないし予測できない。そして箱の中に入れたりなんかもできない。人間が持っている一番危険で、一番面白いことは、僕らの潜在的な可能性なんだ。僕らはそれを図ることができない。創造性は日中でも夜でも生まれる。退屈している暇なんてないんだ』と、ジョルジュは創造性の探求について思うことを語った。

また、彼は自身が混血であることについて、こう語ってくれた。『僕の西洋的な半身は、僕に時の流れが直線状で、過去を後ろに残しながら未来に向かって歩いているんだ、ということを教えてくれる。そして僕のマオリ的な半身は、時の流れは直線的ではなく、後ろ向きに過去を見ながら歩いていいることを教えてくれる。未来は、記憶の裏側に残るもの。このことは、僕に未来を覚えているように、と教えてくれる』

ジョルジュ・ヌクの芸術における神秘的な表現は、ギリシャの哲学者・プロティノスが二世紀に、その著作「エネアデス」の中で賞賛していたことを反芻している。『自分自身の中に戻って、じっと見つめるんだ。もし自分自身の美しさがまだ見えないと思うならば、彫刻家のように自分の美を追求して作品を掘るといい。彫像が美しい顔を見せてくれるまで、ある部分は滑らかだったりクリアにして、ほかの部分を取り払ったり切り取ったりするんだ。そんな風に余分なものを取り払って、ゆがんだところを矯正し、暗くなっているところを明るくクリアにしながら、自分自身の彫像を作り続けるんだ。そこから、神々しい美徳による輝きが現れるまで。君がそうなって、それを見つめて、純粋かつ孤独に自分と過ごすことで、今では君が君自身であることを邪魔するものが何もなく、自身と混ざり合った余計なものが何もないと感じるならば…君はなりたい自分になれるんだ』

本展の展示作品の多くは、去年9月に新ミラノ文化博物館で展示されたもので、20点の家具作品はサザビーのオークションで競り落とされた。全ての売上金は、アジア、アフリカ、アメリカ、オセアニアの文化遺産の保護を目的とした非営利組織に全額寄付された。支援の目的は、異文化間での活動やそれに対する参加を刺激することで、博物館と守るべき遺産に対して、積極的な役割を果たすことでもある。カルテルはこのコラボレーションを、リサーチと実験を含む世界のアートと文化に対する注目をさらに強めるものだ、と語っている。

Kartell and Maori art by George Nuku: The new design fusion
会期：2017年5月3日（水）〜14日（日）
時間：11:00〜18:00（月曜日休館）
会場：Musée des Arts décoratifs
住所：107 Rue de Rivoli, 75001 Paris
https://designfestival.ddays.net