北海道アール・ブリュット展

HAPPENINGText: Ayumi Yakura

カフェ・レストラン・バーである「ミートラウンジ」へ進むと、吉田幸敏(当麻かたるべの森美術館)によるパンダをモチーフとした作品が目に入る。

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「無題」© 吉田幸敏(1955年〜), 2016年, 895 x 1,010 mm, 紙に色鉛筆

自画像や写真集の動物をモチーフに描く彼は、50歳を超えてから創作の幅が広がり、施設スタッフのサポートを得ながら、動物の形状を認識して描く事ができるようになったという。赤い紙をベースに輪郭線を描き、慈しむように色鉛筆を塗り重ねていく。

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「昔の写真の絵」© 三浦明菜(1987年〜), 2013年, 1,300 x 5,070 mm, 紙に鉛筆

ミートラウンジの奥にあるピンク色の壁紙が印象的な壁には、三浦明菜(アートセンターあいのさと/札幌市)によるモノトーンの作品が展示された。スポーツが好きで、バスケットボールチームやダンスにも励む彼女は、負けず嫌いで根気強い性格。本作は幅5メートル以上の大作であり、古い芝居の記録写真をモチーフとして全て鉛筆で描かれている。『私にしかできないこと』を強く意識し、その活動を気に入っているという。

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「無題」© 田湯加那子, 557 x 664 mm, 紙に色鉛筆

北海道白老町の自宅で創作活動を行う田湯加那子は、アイドルやアニメ「セーラームーン」のキャラクター等を多く描いている。本展では花を描いたシリーズが、黒を基調とした空間を鮮やかに彩っている。色鉛筆を用いて強い筆圧で塗り込めた画面からは強い生命感が感じられる。

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「無題」© 松島ひろみ(1987年〜), 2013年, 460 x 620 mm, 紙にボールペン

カウンターの側には、松島ひろみ(当麻かたるべの森美術館)の作品が展示されている。ボールペンで描き重ねられた作品は、一日中、誰に話しかけるでもなく喋り続ける彼女が、菊地氏から「お話している事を描いてみたら?」と提案された事をきっかけに描かれるようになった。一つとして同じではない日々の蓄積を見比べると、描かれた日の心模様や、話した言葉が賑やかに聴こえてきそうだ。

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