同じく自然や環境問題をテーマに作品制作を行う、ハン・サイ・ポーのインスタレーション「黒い森」は逆の性質を持っている。

Han Sai Por (Singapore), Black Forest 2016, 2016, Wood and charcoal, Dimensions variable

黒い森を形成する黒い木炭は、緑に覆われた東南アジアの熱帯雨林の深刻な環境変化へ対して警鐘を鳴らすとともに、音、宇宙、光を吸収する新しいエネルギーへと再生する自然の回復力を示唆している。ユートピアのディストピア。

Ade Darmawan (Indonesia), Singapore Human Resources Institute, 2016, Installation with paintings, prints, photographs, found objects and furniture, Dimensions variable

アイデンティティを探求するアデ・ダルマワンの「シンガポール人材養成機関」と名付けられたインスタレーション作品は、シンガポールとインドネシアのリサイクルショップなどから集められたもので構成された想像上の空間を再現したもの。傷ついたオフィスデスクの中には、国民の願望、海軍への依存、時間の経過とともに変化した価値観などの物語が詰め込まれている。

Subodh Gupta (India), Cooking the World, 2016, Found aluminium utensils, monofilament line and steel 600 cm (diameter)

この数百年というもの、アトラス（地図）とミラー（鏡）は私たちに欠かせない道具であり続けてきた。地図は未知なる地への探検と発見の痕跡を残すことに役立つ一方で、自身を映す鏡は異なる視点と内省を促す。「アトラス・オブ・ミラーズ」をタイトルに掲げた今回のシンガポール・ビエンナーレは、アジア諸国における地域を越えた歴史や現状の共有を探り、移動の痕跡と絡み合う関係性をアーティストの多様な視点で描き出すことに成功している。

Singapore Biennale 2016 – Atlas of Mirrors
会期：2016年10月27日（木）〜2017年2月26日（日）
会場：シンガポール美術館他
入場料：大人 💲20、学生・シニア 💲10、子供（6歳以下）無料
TEL：+65 6589 9580
主催：シンガポール美術館
https://www.singaporebiennale.org