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「モノ・ジャパン」展

HAPPENINGText: Kiyomi Yui

去る2月5日から7日まで、アムステルダムにあるロイドホテルで「モノ・ジャパン」というユニークなイベントが開催されて話題を集めた。これは、伝統工芸品やデザインプロダクトの展示即売フェアだが、集められたのは日本で作られたものばかり。北海道から九州までの15の生産者と販売者、日本の製品だけを販売するオランダの3社が出展した。

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Art direction & design Masaya Takeda © MONO JAPAN

取り扱われた商品は、服飾小物や衣服、刃物、クラフト用のくみひも、文房具、お茶やお線香、スピーカー、芸術作品や陶芸作品、そしてテーブルウェアから大型家具などに至るまで、非常に多種多彩。小規模ながらも見応えのあるフェアで、期間中の来場者数は4800人にのぼった。

舞台になったロイドホテルは、ダッチ・デザインを基調にした斬新なインテリアが特徴で、ワークショップや展示会を行うスペースを併設した“文化の発信地”でもある。このホテルの大小様々な客室が、今フェアの展示会場に変身。どの部屋も趣向を凝らしたプレゼンテーションで訪れた人々を迎えた。

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Lloyd Hotel, Photo: Tsuyoshi Yamada (Sfect) © MONO JAPAN

モノ・ジャパンを主宰したのは、オランダ在住15年になる中條永味子だ。日本とオランダの文化交流をサポートするジャパン・カルチュラル・エクスチェンジ(JCE)の主宰者でもある。経済産業省が日本のものづくりを世界に向けて発信する「モアザン・プロジェクト」では生産者のアドバイザーも務めており、日本の伝統産地やオランダの市場にも詳しい。『日本各地で素晴らしい生産者の方々が活躍されていて、その高い技術は世代を超えて伝えられてきました。けれども近年の伝統産地は、生産規模の縮小、職人の高齢化や設備の老朽化など様々な問題に直面しています』。そんな危機感を抱く中條氏は、まずはこのオランダでも、日本の素晴らしいものづくりを理解し、支持する“ファン”を増やしたいと考えた。『そのためには、市場の開発と共に、伝統技術やその歴史、自然とのつきあい方と言った総合的な世界観を伝えていくようなコミュニケーションが必要で、そのための場やツールとなるようにと願ってモノ・ジャパンを企画しました』。

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大山製茶園, Photo: Kiyomi Yui (Studio Flog) © MONO JAPAN

会場では、出展者たちが製品の傍らに立ち、産地の歴史や製造方法、製品の手入れの仕方などを丁寧に来場者に説明した。そんなストーリーテリングこそが、ものづくりを「商業」から「文化」へとシフトし、新しい価値観を生み出していくのだ。主宰者と参加者が一体となって作りあげたモノ・ジャパンが将来に見据えているのは、生産者が程よい量産を続けていくことに貢献できるような、継続性をもった国外市場の形成である。

一方、来場者たちにとっては、日本の伝統的なプロダクトを一望できる貴重なチャンスになった。マルチカルチュラルな街アムステルダムでは、「日本」は知名度の高い国だ。それでも、これだけ多くの日本のプロダクトが一堂に会した展示即売フェアはこれまでになかった。種類も技法も異なる多くの品々に触れることで、日本特有の美意識や精神性を深く知る機会になったことだろう。

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