ディアン・チューク

PEOPLEText: Yoshiko Kurata

雑誌「トキオン」の制作に関わっていた時と比べて、雑誌デザイン全般はどのように変わってきたでしょうか?

「REVelation」、「MU」そして「トキオン」も全て制作コストも少なく、とても小さなチームで作り上げてきたので、とても自由度の高いインディペンデント雑誌でした。特に「トキオン」ではデザインに関してはかなり任されていたので、デザインするのも楽しかったですし、その楽しさが1ページ1ページに出ていたと思います。タイポグラフィーもストーリーが進むに連れて崩れていったり吹き飛ばされていってしまうような感じにしてみたり、時には手縫いで作ったり、水彩だったり、手書きだったり…その時やそれ以降でも他の誰かがやっていたこととは違うことができていたと思います。もうほとんどがデジタルに移行してしまったので、最後に買ったインディペンデント雑誌がどんなものだったか覚えていません。

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Art Direction & Design of Tokion Magazine by Deanne Cheuk

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Art Direction & Design of Tokion Magazine by Deanne Cheuk

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Art Direction & Design of Tokion Magazine by Deanne Cheuk

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Art Direction & Design of Tokion Magazine by Deanne Cheuk

「NEOMU」について教えていただけますか?

ニューヨークに越してきた時に今まで作っていた「MU」を廃刊にしてしまったのですが、何かを作ることは続けたかったのです。その時にデザインの本について考えていることがあって「本当に欲しい情報は1〜2ページだけなのに、一冊50ドルかそれよりもっと高く、なぜ全ページが素晴らしい本を無料や安価で誰も作らないのだろう」と思ったのです。それ以降はその思いをマニフェストとして、利益や出版について常識となっていた考え方を覆していきたいと思うようになりました。まずは印刷会社に掛け合い、(実際にはそうでは無かったのですが)一番安くなるように一番小さいサイズで上製本してもらえる冊数を教えてもらい、「MU」のメールマガジンに登録していた人や知人達宛に作品募集していることをメールで知らせることがスタートでした。合計8冊をまとめることができてお店に無料で配布。店では1ドルで販売をして頂き、売り上げはそれぞれが選んだ慈善団体への寄付を依頼しました。インスピレーションの連鎖をイラストレーターやアーティストからまず私に、お店からお客さんへ、そして慈善団体へと繋げて行くことが目的でした。本当に正直な気持ちからきたものだったので、それが伝わって成功をおさめることができたのだと思います。販売価格を何故1ドルにしたかというと、そうしないと誰か一人が何部も持って行ってしまうかもしれないと考えたからです。沢山の人から「一冊1ドル以下なんてどこで印刷できるのか」との問い合わせメールを頂いたのですが、利益をあげることが目的ではなかったので、実際のところ一冊印刷するのに約4ドルかかっていました。信託資金なども無く、正社員として広告会社に勤めてながらフリーランスやデイビット・カーソンのアシスタントをしていましたので、つまり3つの仕事を掛け持ちしてこのプロジェクトの制作や他のプロジェクトの場合も費用を全てまかなっていました。

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