ハンツヴィル

PEOPLEText: Ayumi Yakura

フィランドの映画監督アキ・カウリスマキの映画とのコラボレーションについてお伺いします。映画において音楽は重要な要素だと思います。即興の音楽を合わせることで、どのような効果が得られるのですか?また、そのために準備していることはありますか?

確かに即興で映画音楽を演奏しますが、私たちの演奏には、普段から即興と同じ要素がいくつかあります。私たちの音楽は、演奏ごとの即興的なアプローチによる「曖昧な作曲」と言えます。常に即興であり、常に違ったサウンドなのです。ただし、根本的には常に違わないとも言えます。

私たちが演奏のために準備しているものは、バンド結成の2005年から継続して私たちの音楽を発展させてきたプロセスです。100回のコンサート、そして4回のレコーディングを通して、同じ考え方に基づいて活動を続けながら、新しいアプローチを常に探しています。

今回のプロジェクトに関して、私たちは事前に映画を観ることで、音楽を直接的に映画の演出とリンクさせたいか、音楽を映画のコメントのようにするのか、それとも音楽と映画を別のものとしながら、同時に芸術的な表現、雰囲気、変化を与えるものにするのか、などと考え準備を進めます。また、こういったインタビューによって私たちの意識を作っていけることも、今回のプロジェクトのよい準備になると思います。

参加者は、これまでとは全く別の体験を期待できると思います。ただの映画ではなく、コンサートでもないのです。そのどちらもであって、どちらでもない、他のものです。このパフォーマンスは観客に多くのことを問いかけ、イマジネーションに多くのスペースを残します。観客の皆さんがこの体験に参加してくれることを願っています。

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Granada, Spain (April 2010)

映画に合わせて演奏した最初のきっかけは何でしたか?そして、演奏後の反響はいかがでしたか?

私たちが最初にこのプロジェクトを行ったのは、2008年、スペインでのことでした。会場は、無声映画に即興で演奏を行うスペインでのフェスティバルだったため、観客はこのシチュエーションに慣れているようでした。反応はとてもよく、カウリスマキの作品が醸す特別な雰囲気と私たちの音楽とのコンビネーションがとてもよかったと思います。

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© Aki Kaurismäki

カウリスマキ監督の演出は、カット割りのテンポや、「間」のユーモアが特徴的だと思います。演奏を合わせる時に大切にしていることを教えてください。

私たちの音楽の雰囲気や演出方法は、映画の演出と必ずしもリンクしているわけではありませんが、そこに面白さを見出すことができます。演奏時の私たちは、音楽的なドラマを構築するプロセスに集中し続けるため、映画の具体的なシチュエーションに直接注意を払うことができません。これにより、音楽は映画にコメントを与えることになり、音と映像の1対1の関係を円滑につくりあげるでしょう。そのようなことに挑戦したいと思っています。

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© Aki Kaurismäki

カウリスマキ監督の作品は、人間の性質について深く描き、人生における尊厳や、真の豊かさについて観客へ問いかけていると思います。ハンツヴィルの音楽性にも共通する要素はあるでしょうか?

とても答えるのが難しい質問ですね、私にもこの答えはわかりません。しかし、私たちの音楽は集団的プロセスに由来するということを押さえておきたいです。これは、私たちの音楽のとても小さなエゴです。ソリストと、そのソリストをとりまくミュージシャンが演奏するジャズのような従来の組織的な音楽よりむしろ、一つの大きな生き物を作ろうとしています。そういった意味では、エゴから来る集団的プロセスを置くことは私たちにとって重要なのです。

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