渡部雄吉写真集「張り込み日記」

THINGSText: Ayami Ueda

渡部雄吉は日本の写真家であり、田村茂の助手を経て1950年に独立した。以降、「文藝春秋」、「中央公論」などの総合雑誌に作品を発表したり、ウィーン「世界青年平和写真展」報道写真部門でのグランプリを皮切りに国内外を問わず数々の賞を受賞したりと知る人ぞ知る気鋭の作家となった。後年には海外での取材も多く、世界の各地方での作品を残した。1993年に69歳で死去している。

渡部雄吉写真集「張り込み日記」

2011年、フランスの出版社エディションズ・ザビエル・バラルから発表された「クリミナル・インベスティゲーション」という作品によって彼は再び注目を浴びることになった。これは昭和33年(1958年)に発生したバラバラ殺人事件の実際の捜査の様子を、渡辺雄吉がのべ20日間にわたって二人の刑事に同行して撮影したものだ。「張り込み日記」と題されたこの作品群は国内では1958年に雑誌「日本」に数点掲載されたが残る大部分は人目に晒されることはなかった。ところが、2006年にイギリスの古書店のバイヤーが神保町で120枚にものぼるこのシリーズのプリントを発見し、持ち帰られたそれらは流れ着いた先のフランスで写真集として発売されることとなったのだ。戦後の空気が色濃く残る昭和の町並みを舞台としたまさしく和製フィルム・ノワールの様相が世界中から称賛され、その年のベストセラーの一冊となった。

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この一連の記録写真には、一般的なそれらには見られない人間味ある情緒がふんだんに香る。捜査の緊迫感の中で作家によって捕らえられた被写体の表情にはどこか飄々とした雰囲気すら垣間見え、両者の絶妙なバランスが精密さを感じさせる。あくまで二人の刑事の仕事に対する真摯さを背景にして切り取られた瞬間的な緩みー温かみとも言えるーはまさにダンディズムと呼べるものであろう。強烈な冷静さが生み出す熱は見る者にドラマチックな高揚を与えてくれる。

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そして2013年9月、日本版となる新たな写真集として「張り込み日記 Steakout Diary」が完成した。写真集レーベルロシンブックスの立ち上げ第一作目となるこの作品は、渡部雄吉の家族によって保管されていたオリジナルのネガを元にセレクトから見直しプリントを作成したものだ。前述のフランス版では未発表の写真も含まれており、初見でもそうでなくても大いに楽しめる内容となっている。

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また発売に際してはタカ・イシイギャラリーモダンにて同シリーズの写真展が開催される。9月13日にはレセプションパーティーも行われるので足を運んでみてはいかがだろう。

渡部雄吉写真集「張り込み日記」
発売:2013年9月13日発売予定
価格:4,500円(税込)
仕様:104ページ、モノクロ、ハードカバー
言語:日本語、英語
サイズ:230mm x 305mm x 12mm
出版:roshin books
ISBN:978-4-9907230-0-2
http://roshinbooks.com

渡部雄吉展「張り込み日記」
会期:2013年9月13日〜10月12日
時間:11:00〜19:00(日曜・月曜・祝祭日定休)
オープニング・パーティー:9月13日18:00〜20:00
会場:タカ・イシイギャラリー・モダン
住所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F
TEL:03-6447-0500
http://www.takaishiigallery.com

Text: Ayami Ueda
Photos: Steakout Diary © Yukichi Watabe

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