「ウォールデン・メモリーズ(森の生活の思い出)」展

HAPPENINGText: Valérie Douniaux

ル・フレノワ(国立現代美術スタジオ)は、そのハイレベルな美術学校と、学生と招待アーティスト講師による革新的な展覧会、実験的な試みが世界的な評価を得ている。今回のル・フレノワの新しい展覧会「ウォールデン・メモリーズ(森の生活の思い出)」は、革新的なものを生み出すという精神に従い、アメリカ文学の古典を現代のハイテク社会の新たなライフスタイルの中に組み込んだものとなっている。

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The unique picture obtained from the superposition of all the pictures

ジャン・フランソワ・ペイレはこの展示のコンセプトの考案者で、音、映像、科学、技術、思想の「対話」を創り出すことを好むアーティストだ。そして、文学も彼の作品の中で重要な役割を果たしている。この展示は、長い間ペイレをとらえてやまなかったヘンリー・デイビット・ソローの古典、「ウォールデン(森の生活)」が元になっている。

発行以来、「ウォールデン」は熱狂的支持を得て、ガンジーやビート・ジェネレーションなどの人々に多大な影響を及ぼしてきた。多くの人々がソローを生態学、脱成長論の父であると考えているが、そのこと自体はそれほどペイレの関心の的ではない。実際、ペイレは特に自身が自然愛好家でも生態学の信奉者でもないし、文章それ自体が持つ高い文学性を除いては、ソローの文章の魅力をうまく伝えることはできないと明かしている。

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A general view with the poles in the background

ペイレが2010年にル・フレノアの招待アーティスト講師を務めたときには、人間と技術との関係を観測する場所として存在するウォールデン池のソローの小屋のレプリカを創ることで、彼に多大な感銘を与えたソローの本を直接題材とした。そして2013年、今回ペイレが作り出した小屋は自然とウォールデンの森との関係を表現した。

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The automatic translation (left) and Agnes de Cayeux avatars (right)

ディレクターは小屋をいくぶん“おしゃべり”なものにするため、ピエール・ヌーヴェル(映像アーティスト、セットデザイナー)、アレクサンドロス・マルケアス(作曲家)、ティエリー・コデュイ(テクニカル・マジシャン)、アニエス・カイユー(作家)らを共同スタッフとして集めた。彼らがイメージしたのは、ル・フレノワに巨大な空間を作り出し、「ウォールデン」の文章を壁や天井上の自在な方向へ駆けめぐらせ、さらにその文章を役者とその複製の電子アバターが話しているかのように聞こえるという印象的なアート装置だ。

「ウォールデン」の文章を読む役者自身の声と、役者のアバターの声とが重なり合い、「言葉と記憶」というものについての根底的な問いかけが始まっていく。またこの展示では、最新で、最も優れたソフトウェアを使うことで、アート装置の壁がテキストを自動で翻訳し続けるという、翻訳における新たな実験も行われている。

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