「ウォールデン・メモリーズ(森の生活の思い出)」展

HAPPENINGText: Valérie Douniaux

さらに、「ウォールデン」の文章は樹の形へと徐々に姿を変えていき、発光する電子のポールが一方では「ウォールデン」からの引用文、もう一方ではウォールデン池の写真の断片をディスプレイする。観客は展示のある一カ所のポイントに立つと、光るポール一本一本で形づくられたウォールデン池の全体像を見られるという仕組みになっている。小さなプールに反射したウォールデン池のイメージが創り出すのは、ある種の奇妙な感覚だ。そこでは二つの言葉が一つに融合し、観客はまるで反射する水の中を横切り、異世界の中へと足を踏み入れるような感覚にとらわれる。

Walden Memories
The poles displaying a picture of the pond, reflected on the water

この展示のいたるところに存在するウォールデン池は365日、全く同じ場所から写真を撮られ続けた。壁にディスプレイされている写真は全て、世界の可変性や時間の流れといったものの美しいメタファーだ。「ウォールデン・メモリーズ」のクリエイターたちは撮影された全ての写真を同時に並べることで、独創的なイメージを創り出すことに成功している。

ウォールデン池はまるで永遠の中に閉じ込められたようで、それと同時に、永遠に続く自然の環、そして幾重にも重ねられたイメージ間のわずかな変化の中で小刻みに揺れ動いているようだ。観客はただチャイムの音楽だけが流れる静かな空間の中で、写真の前で立ち止まったり、古い揺り椅子でくつろいだりして、ウォールデン池の写真の瞑想に浸る。

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The pictures taken during one year at Walden pond

「ウォールデン・メモリーズ」では、故意に空間を暗くすることで非常に静かで瞑想的な感覚を演出している。目が慣れるまで少しかかるが、私たちはあたかも記憶の深い底から浮かび上がってきたかのような、「ウォールデン」に由来する音とイメージだけが現れる静かな暗闇に包まれるだろう。ここにはきっとソローの魂がときどき静かにやってきて、愛するウォールデンの池と森を楽しんでいるに違いない。

Walden Memories
会期:2013年2月9日(土)~3月31日(日)
会場:Le Fresnoy
住所:22 Rue du Fresnoy, 59200 Tourcoing
TEL:+33 (0)3 2028 3800
https://www.lefresnoy.net

Text: Valérie Douniaux
Translation: Sahomi Nishimoto
Photos: Pierre Nouvel

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