NIKE 公式オンラインストア

大野力「ラインズ」

HAPPENINGText: Miki Matsumoto

会場には、家具や照明を扱うディーゼルのホームコレクションラインの商品が点在し、その間を縫って、黒のスチールと木のフレームという2素材が描く線が、空間を縦横無尽に延びる。それぞれの線が描く線は時に重なり、設置されたアイテムと相俟って、ベッドルームや居間、玄関、廊下、といった各機能をもった部屋の姿を鑑賞者の脳裏に立ち上げる。

01.jpg
Photo: Toshiyuki Yano

なお、線を描く2素材の使い分けだが、強度があり一本線でも自立可能なスチールは、鉛筆で一筆書きをするかのごとく、始点から終点まで一本のラインで繋がっており、一方の木材はより安定した構造である櫓形式を採用し、柱4本とそれらを繋ぐ梁を1ユニットとして、複数個設置されている。

06.jpg
Photo: Toshiyuki Yano

会場手前には、ドアを想起させるアーチ状の線が描かれ、そこから鑑賞者を誘導するかのごとく、空間の奥へと黒いラインが延びる。「輪郭線というのは、実体の一番外のアウトライン。そこから、実体は無い状態でアウトラインだけを取り出しても、十分にモノの意味はくっついてくるのではないかと思ったんです」と大野氏は述べるが、空間に補助的な線を加えるだけで、ここまで具体的な場の姿が立ち上がることに驚く。

05.jpg© KENJI TAKAHASHI
Photo: Toshiyuki Yano
 
輪郭線が描く部屋は、それぞれ1、2畳程度の極めて小さな空間だ。「部屋と言うより家具の延長と言うべき身近なスケール」と大野氏が称するこの独特の空間単位は、先に家具を設置し、その周囲に家具より一回り大きい空間を設定することで生まれた。壁をたてず、シースルーの空間を線で区切るというアイディアは、空間の大きさや部屋の単位が見える状態でありながら、圧迫感を感じさせない工夫でもあるわけだ。それにしても、なぜここまで極小の空間にこだわったのか。
 
『家具とその家具にまつわる活動の最小スケールを考えてみたかったんです。例えば寝室って寝るだけなら6畳もいらないですよね。ベッドがちょうどおさまる空間があれば、ただ寝るだけの場所としては機能すると思います。その時、寝室以外の場所はきっと広くなって、また別の方法で利用できる。それが良いか悪いかはその生活者によって変わると思いますが、いずれにせよそういう生活の最小単位を並べていくとどんな環境が立ち上がるのかに興味がありました。元々2LDKくらいの広さの住宅を10Kとかにしたらどんな感じかなあって想像すると楽しくないですか?』

 インスタレーションは2014年2月中旬までの1年間継続され、期間中にはアップデートも予定している。快適さを感じる空間づくりや、自分の生活に必要な空間のスケールについて、家具と自分との関係性を起点に考えることで、新たな家作りの在り方すら示唆する貴重な本展示に、是非足を運んでみてはいかがだろうか。

大野力「LINES」
会期:2013年2月22日(金)〜2014年2月16日(日)
時間:11:30〜21:00(不定休)
会場:DIESEL SHIBUYA
住所:東京都渋谷区渋谷1-23-16 cocoti DIESEL SHIBUYA B1F
TEL:03-6427-5955
協賛: 株式会社サンエムカラー
https://www.diesel.co.jp/art/

Text: Miki Matsumoto
Photos: Toshiyuki Yano

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE