「パノラマ:現代アジアのアートの新潮流」展

HAPPENINGText: Rachel Alexis Xu

展覧会で時折現れるもう一つの面白いモチーフは、自己再帰性だ。アジアにおけるアートは、その限界を押し上げることと自身の定義を問い始めることの狭間を行き来している。

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この展覧会で、シンガポールの抽象的なアートの創作はそれ自身の中で終結するものとして丹念に仕上げられており、その本質はその形状の輪郭をとっている。こういった概念は残念ながらぞんざいに扱われがちだが、この先数年のあいだに勢いを増していく活発な議論の兆しを示している。

アートを定義するにあたって、ただ単に伝記的な本質を投影することとの違いは何だろうか?アートとは現実性の上に成る世界の対する課題を示唆または投影したものであり、そして全く同じ世界観は二つと存在し得ない。

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アグス・スワゲによる「アイ・ウォント・トゥー・リブ・アナザー・サウザンド・イヤーズ」という作品では、過去の著名人たちが煙草をくわえ堂々たる姿でカメラを見つめている。この作品は不朽の名声とともに並べられた死には抗えない人間の運めという皮肉だけでなく、作品の人物たちが世界に対して注いでいた各々の視線といったものも突きつけている。

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パノラマの広がりを通して、線が走り、交わり、そして引き直す。アジアのアーティストたちは彼ら自身の道筋を明快に示し、時に自己に対する苦悩や未知の領域を探る。我々の生きる今を切実に訴えているのだ。

「パノラマ:現代アジアのアートの新潮流」展
会期:2012年9月14日(金)〜12月12日(水)
会場:Singapore Art Museum
住所:71 Bras Brasah Road, Singapore 189555
https://www.singaporeartmuseum.sg

Text: Rachel Alexis Xu
Translation: Ayami Ueda
Photos: Rachel Alexis Xu

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