アンドレアス・ムルクディス

PLACEText: Kiyohide Hayashi

その他に目に付くのはドイツの家具ブランド「e15」の木製の椅子。成形した木を組み合わせた非常にシンプルなものだが、ヨーロッパ産木材を使用した素材へのこだわりは、素材感あふれる仕上がりから感じることができるだろう。

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e15

このような服飾用品や家具や磁器に囲まれて、なんと板チョコレートさえもある。これは20世紀初頭から独自の手法によってベルリンで作られている「エーリッヒ・ハーマン」のチョコレートだ。「アンドレアス・ムルクディス」にあるのはこうした多種多様な品々。

ここに取り揃えられたものはアンドレアス・ムルクディスが気に入ったものだ。つまり彼が人々に説明できる良さや歴史を持ったものなのだ。それは表面的なデザインだけでなく、素材への拘りや丁寧な製造工程でもあり、時として伝統という言葉でも言い表すことができるだろう。また同時にそれ以上の制限を与えないからこそ、ここにあるのは領域を越えた様々なものとなる。こうした多様多様なものとの出会いを生み出すスペースを彼は “小さな百貨店” と呼ぶ。

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Le Cabinet de Curiosités de Thomas Erber

店舗内では定期的に展覧会が開催されており、現在開催されている展覧会はまさに彼の考えである小さな百貨店を体現するものと言えるだろう。「Le Cabinet de Curiosités de Thomas Erber」は、ファッション・ジャーナリスト、トーマス・エルバーによって選ばれた品々を紹介する展示である。そこに取り上げられたのはアクセサリーやサングラス、写真作品やカタログ、そして家具や自転車など多種多様なものだ。

例えば、劇作家・寺山修司と写真家・森山大道のコラボレーションとなるカタログ「あゝ、荒野」。その美しい装丁を見ると、手に取り読むという欲求を感じずにはいられない。一方でデザイナー、クリスチャン・ハースのガラスのサイドテーブルには、透明ガラスであるにも関わらず、テーブルとして自己主張するその存在感に驚かされるだろう。

このような一つのジャンルに留まらない展示作品は、展示物として隔たれることなく店の商品と混じり合い、素晴らしい共鳴を生み出す。領域を越えた様々なものとの混じり合いは、見るものの前に美しく秩序だった小宇宙として現れるのだ。

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