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TWSクリエーター・イン・レジデンス・オープン・スタジオ トーキョー・ストーリー 2011

HAPPENINGText: Yu Miyakoshi

「日本国家」を見つめた写真、と言えばいいだろうか。長くイギリスで活動してきた米田知子(よねだともこ)の写真は、今までの作品とはカラーが異なっていた。舞台が変われば作品も変わるとはいえ、そこには身近で見慣れた日本の風景はどこにもなく、写されていたのは広島、靖国神社、菊の花、福島の飯館村、伊藤博文の暗殺現場(中国・ハルピン)などと言った日本的で、制圧された風景だった。

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米田知子「平和記念日・広島」2011

本展覧会のテキストによると、そこには米田氏が福島の第一原子力発電所の事故をきっかけに感じた思いが綴られていた。「個を含有し、支配し帰属させる社会・国家の姿を見た時、我々は今まで見えない“権威”へ屈していたのではないかという疑問に開眼し、新たな挑戦が芽生えた」そして、日本的なモチーフに焦点を絞ったわけは、つづきの文章にあった。「明治維新以降、列強諸国に比肩しようと民主化、近代化を進め、また、世界を舞台に数々の戦争に賛同していった歴史と現在——ここ東京に滞在しながら、それは何を意味してきたのかを、自分なりに考えている。初の被曝国となりながら、なぜこの土地に原子力を数多く存在させ、また新たな核の恐怖をここに示さなくてはならない現状に至ってしまったのか? 結局、私にとって”我々の存在の意味”が大きな課題として表出することになる。これを突き詰めて考えてみたい。」

昨年の原発事故を通して私たちは、米田氏の言う「見えない“権威”」の恐ろしさを知ることになった。米田氏の美意識に貫かれた写真に惹きつけられたとき、普段は見過ごしている何かに注視させられる。米田氏はテキストを次のように結び、私たちが日ごろ信じているものを、そのまま鵜呑みにしていいのか、と尋ねる。「なにが、善で悪、正常で異常なのか。全ては不可視化されている。」

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8gg「東京断章」2012 © Tokyo Wonder Site

中国のメディアアーティスト、8gg(エイトジージー)は驚くことに、夫婦でユニットを組み、制作を行っている。今回の作品「東京断章 (Part of Article about Tokyo) 」の展示ルームに入ると、何かが炸裂するような音が鳴り響き、その音に同期した砂粒のような映像が集ったり散ったりしている。パネルの反対側にまわると、色彩豊かな桜の映像が投影されていて、枝を伸ばし、つぼみを広げ、花を咲かせていく。瞬間的に視覚と聴覚を奪う暴力的な印象と、桜の美しさのコントラストには、美的快感とでも言うような気持ちよさがある。

8ggの男性作家、フ・ユは東京についての印象「抽象的な牧歌」を表した面「不忍池に一人佇む」を制作し、女性作家のジャ・ハイキンはもう一方の桜の面「谷文晁とカスティリオーネとの絵画」を制作。8ggは作品について、「これは私たちが東京について感じたことそのものです。常に両極端があり、常に完璧なバランスを保っているのです。」と語っている。両極という言葉に示される通り、男性性と女性的がみごとに調和した作品だった。

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