ヴァカント

PLACEText: Yu Miyakoshi

開拓者から、東京の “今” のカルチャーを伝える定住者へ 

がらんとした空間から始まったことから「VACANT」(空の)と名付けられたスペース「ヴァカント」。結成当初は2人だけだったクリエイターチーム「NO IDEA」が東京の原宿ではじめたこのお店は、いい意味で何でもありなスペースだった。「空っぽの空間に、使う人が色をつけてくれればいい」そんな半ば実験的なコンセプトでスタートして3年、ヴァカントはレンタルスペースとして、カフェとして、文化発信基地として、クリエイターやミュージシャンたちに利用されてきた。カフェのメニューは不定期で、イスと机はイベントに合わせてすぐに模様替えできるように、折りたたみ式。外国の農家のストレージのような、ラフな印象を残す店内。そんなちょっとアウトサイダー感のあるところがヴァカントの魅力でもあり、以前はどことなく、移動を繰り返しながら生活をいとなんでいく開拓者の住居のような印象を与えていた。あまりひと所に根付かないように、いつでも旅に出れるように。

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ところが2012年1月13日、リニューアルオープンしたヴァカントは、ぐっと落ち着きを増し、新しい空気を迎え入れていた。それはまるで、開拓者から定住者へと様変わりしたようだった。ヴァカントのカラーが定着しはじめてきたところへ持ってきて、今リニューアルをした思惑とは?スタッフの佐々木さんに尋ねると、『オープン以来、ヴァカントというプレーンな箱で色んなことを試しては見守ってきたのですが、これからはもっとヴァカントとしての色を出していきたい、この場所に定着していきたい、という方向性に絞ったのです。』と教えてくれた。

内装は、NO IDEAメンバーの1人が手掛ける、空間プロデュースレーベル「DAIKEI MILLS」(ダイケイ・ミルズ) によるもの。驚かされたのは、今回のリニューアルのために造られたテーブルとレジカウンター。ダイケイミルズの手掛けた空間は「UTRECHT」や「ROCKET」でも目にしていたが、今回の空間と家具は、いつものとはカラーが違う。以前はプレーンな木材を使用するのが特徴的だったように見えたが、今回はぐっと落ち着いた色を施し、重量感が増している。特に背の高いレジカウンターは、アメリカのシェーカー村のキッチンにでもありそうな、味のある風合いに仕上がっている。

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入口の正面のスペースには、月替わりでクリエイターが手を施すディスプレイが登場し、ギャラリーとしての機能も兼ね備えている。オープンを飾ったのは「THEATRE PRODUCTS(シアタープロダクツ)」の植物ブランド「DILIGENCE PARLOUR(ディリジェンス・パーラー)」。ユニークな形をした葉の植物が植えられた一角には、緑が醸し出す涼しげな空気が漂っていた。展示のテーマに合わせてアートブックやジンなどが入荷されるのも嬉しい。

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実はヴァカントには、本を見るのが目的で訪れるお客さんも少なくない。「twelvebooks(トゥエルブ・ブック)」というインディペンデントブックレーベルが同居しており、独自に入荷している本を見ることができるので、数こそ多くはないけれど「ここに来れば面白い本に出会える」と思うから、つい足を伸ばしてしまう。もう少し正確に言うと、それは「今まさに面白い本、これから面白くなりそうな本」でもあったりするから気になるのだ。

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「NO IDEA」が手掛けるレコードレーベル「LOW VOL.records」が出版している「Wrong Dance, Right Steps」というCDブックも必見。今なお上質なアーティストを輩出し続ける、ニューヨーク・ブルックリンのアーティスト11組をフィーチャーし、コンピレーションCDとインタビュー記事を盛り込んだこのジンタイプの本は、日英2カ国語掲載で、100ページを超すボリューム。しかもブルックリン・カルチャーを牽引するヒシャム・アキラ・バルーチャとマーク・ボスウィックの特別対談も載せているという豪華な内容だ。

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「SyuRo」(しゅろ) の手仕事が光る角缶やアルコールランプ、ペーパーウェイトたち

ショップスペースでは、国内雑貨の取り扱いが増えた。バイヤーが今リアリティを感じる「心を豊かにしてくれる」ような雑貨を取り入れていったら、自然と国内ものが多くなったそう。「HASAMI」(はさみ) の陶器や 「SyuRo」(しゅろ) の金・銀・銅の雑貨、「FUTAGAMI」(ふたがみ) の真鍮製品など、日本の工芸を生かしたシンプルなデザインのプロダクトが揃う。

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店内の奥には鉄の壁が打ち付けられており、この壁はなんと、黒板としても機能するそう。嬉しいのは、カフェスペースを食事だけでなく、打ち合わせや読書などにもどんどん利用して欲しい、というお店のスタンス。Wi-Fiのサービスも提供してくれている。

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メニューもリニューアルされ、日替わりの料理人が手掛けるベジタリアン料理、デリプレート(850円〜)やデリ(300円)がレギュラーで食べられるようになった。テイクアウトできる「TRE FLIP」(トレフリップ) のベーグルもおすすめ。重すぎない独特の歯ごたえは、ベーグルマニアならぜひ一度試してみて欲しい。

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また2階は、エキシビジョンやイベントなどを開催するフリースペースになっている。以前からシアタープロダクツや写真家の三好耕三さん、石川直樹さんなど、多彩なクリエイターとタッグを組んでイベントを展開してきたが、今後も引き続き面白い企画が期待ができそう。

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リニューアルオープンをへて、すっかり風通しのいい空間に生まれ変わったヴァカント。フレッシュな空気に溢れているのは、制服が導入されたせいもあるのかもしれない。「niuhans」(ニュアンス)デザインのワイシャツは、濃紺のカラーでスタッフの気持ちを清々しくするのに一役買っていそうだ。

より完成度の高い空間に生まれ変わった今となっては、「VACANT」という名は当初の名残りでしかない。でも、以前にも増してぐっと間口が広くなり、「どうぞ、空いていますよ」と言って迎えてくれるような雰囲気は、その本来の意味の進化した形のようで素敵だ。

VACANT(ヴァカント)
住所:東京都渋谷区神宮前3-20-13
営業時間:12:00〜20:00(月曜定休)
TEL:03-6459-2962
http://www.vacant.vc

Text: Yu Miyakoshi
Photos: Yu Miyakoshi

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